神経調節性失神に対し起立調節訓練を施行した経験
説明
【はじめに】失神は一過性の意識喪失発作であり,中でも神経調節性失神(neurally mediated syncope;NMS)は失神の24%を占めている臨床上最もよく認められる失神である.当院では,NMS対し積極的に検査・リハビリテーション(以下,リハ)を含めた治療を行っている.今回,NMS患者に対する治療法の一つである起立調整訓練(home or-thostatic self-training;HOST)を行い有効であった症例を経験したので報告する.なお本報告はヘルシンキ宣言に沿った研究である.<BR><BR>【症例1】47歳女性.発作は入院の4ヶ月前からあり,今回の失神で5回目.入院翌日,NMS診断のため立位負荷試験(以下,HUT)施行.薬剤負荷無しで開始11分後に冷感・気分不良の症状認め,心拍53回/分・血圧68/26mmHgまで低下したためテスト中止.混合型NMSと診断され同日より薬物治療とリハ室での生活指導・失神回避法指導およびHOST開始となる.第4病日には30分間の立位が可能となる.第10病日に再度HUT施行.薬剤負荷無しで,32分後に脈拍61回/分・血圧79/29mmHg低下し失神.テストは再度陽性であったが失神までの時間が延長しており,治療効果有と判断され翌日退院となる.<BR><BR>【症例2】18歳女性.半年前より度々立ちくらみを自覚していたが失神までには至らず.入院翌日, HUT施行.薬剤負荷無しで開始10分後に心拍68回/分・血圧101/38mmHgまで低下し失神.心抑制型NMSと診断され同日より症例1同様,薬物治療と各種指導およびHOSTを開始した.第3病日には30分間の立位が可能となる.第7病日に再度HUT施行.薬剤負荷無しで16分後に気分不良の訴えあり失神.テストは再度陽性であったが,失神までの時間が延長しており,治療効果有と判断され翌日退院となる.<BR><BR>【考察】NMSの治療は,発症要因として不眠や就労などの精神的ストレスが深く関与していると考えられているため,これらを避けることが治療の第一とされている.また社会生活を含めたQOLの改善を目的とし,生活指導並びに失神回避法の指導が重要である.これらの生活指導を行った上でNMSの治療には,薬物療法,ペースメーカー治療およびHOSTが選択されることが一般的である. <BR> 今回,我々は生活指導と失神回避法の資料などを作成し,数回にわたり指導を行った.加えて薬物治療とHOSTを併用した治療を行い,結果として失神までの時間の延長が得られた.実際はどの治療が有効であったのか判別は困難であるが,患者自身も失神までの時間延長が得られた事に満足しており,このことが精神的な安定にも繋がったのではないかと考える. <BR> 今回は退院後などの状況は確認できていないが,今後,退院後の失神の発生状況やHOST継続の有無などに関しても調査していきたいと考えている.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), D3P1507-D3P1507, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680544148864
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- NII論文ID
- 130004581051
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可