中学生における足部愁訴に靴が与える影響について

DOI
  • 奥山 真純
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 尾田 敦
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻 弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域
  • 成田 大一
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻 弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域
  • 熊王 寛人
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻 津軽保健生活協同組合健生病院リハビリテーション科
  • 加藤 望
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • 学校指定靴の着用に関する実態調査より

抄録

【はじめに】本邦における多くの中学校や高等学校で使用されている学校指定靴は学年毎に色分けしやすく,コスト面においても安価であるが,選択肢はサイズのみで,本人の足型に合った靴を選べないという問題が従来から挙げられている。また,踵潰しなど靴の機能を損なう形での使用が目立つようになり,日常の学校生活のみならず,体育授業にもそのまま用いられている現状は,成長期の足部保護という点からみると問題があると考える。そこで本研究では,指定靴の使用実態を把握し,足部愁訴との関連を検討することを目的として,成長期にある中学生を対象にアンケート調査を実施した。【対象と方法】市内の某中学校(全校生徒850名)に協力を頂き,予め保護者から同意を得た1~3年生までの820名(男子382名,女子438名)を対象とし,アンケート調査を実施した。調査項目は,足部愁訴の有無,指定靴の履き方,指定靴のサイズの適合,指定靴への総合的な満足度,指定靴での運動のしやすさ,普段靴を購入する際に最も重視する点とした。<BR>【結果】対象者820名のうち,足部に何らかの足部愁訴を持つ者は123名で,全体の15%を占めた。そのうち,16名が指定靴の不適合をその原因として回答した。また,対象者の約40%にあたる327名が,踵を潰して履く,紐を緩めにして履くなどといった方法で靴を着用していることが分かった。また対象者の21%にあたる160名が指定靴のサイズの不適合を訴えており,そのうちの64名は,入学以来一度も指定靴を交換していない生徒で,さらにその9割以上が2年生と3年生で占められていた(59名,92%)。指定靴での体育授業に関しては,対象者の28%にあたる222名が「指定靴では運動しにくい」と回答した。指定靴への総合的な満足度に関しては,対象者のうち202名が「満足していない」と回答しており,中でも「デザイン」に対する不満が最も多く約46%を占めた。また,普段靴を購入する際に最重視する点に関しても,「デザイン」という回答が最も多かった。<BR>【考察】指定靴のサイズの不適合を予防し,それに起因する足部愁訴などのトラブルを解消するためには,定期的に足サイズ計測の機会を設ける必要があると考える。運動靴と比較して,指定靴は運動向けの構造や機能は必ずしも十分とはいえず,また踵を潰すなど不適切な靴の履き方によって,足部保護の機能を失った靴を履いて体育授業に参加している生徒が多い可能性が示唆された。また,靴に対する生徒の関心はデザインやブランドといった側面に偏る傾向があり,足部保護の視点は軽視される傾向にある。中学生は身体発育が急速に進む時期であり,足部の適切な保護がその後の身体発育や運動能力の発達に与える影響は大きい。したがって,足と健康との関連性や靴の選択と履き方に関する教育,足部保護や靴の機能性を優先した運動靴での体育授業への参加などの対策について前向きな検討が必要であると考える。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), E0342-E0342, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544172032
  • NII論文ID
    130005016060
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.e0342.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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