訪問リハビリ早期介入により自宅退院後の生活が円滑となったALSの1症例

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抄録

【はじめに】筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は、筋萎縮が全身におこる進行性で、且つ著しい呼吸機能障害を引き起こす原因不明の難病である。そのため、退院前の家屋評価や環境整備だけでは不十分であるといえる。持続低圧吸引器の導入を含めた、生活環境の最適化を適宜行うことにより、円滑に在宅生活を送れるようになったALS患者の1症例をここに報告する。尚、症例報告にあたりご本人、ご家族の了承は得ている。<BR>【症例紹介】現病歴:57歳女性。平成18年3月にALSの診断を受ける。同年12月嚥下機能低下に伴い、胃ろう造設。平成19年1月自発呼吸困難となり気管切開、人工呼吸器管理となる。病態落ち着き、同年4月自宅退院、翌日より週2回の頻度でPT介入している。<BR>【経過】(平成19年4月)MMT:上肢2~3(右>左)、下肢3(右>左)、手指屈曲・伸展可。ADL:寝返り自立、端座位保持可、起き上がり、立ち上がり軽介助にて可。P-トイレ使用。食事は経管栄養。コミュニケーション:筆談、文字盤、簡単なジェスチャーにて可。介入当初は右上肢・手指の利用が可能であった為、携帯用会話補助装置としてレッツチャットを、呼び鈴としてホームコールを導入しスペックスイッチにて調整したが、身体機能低下に伴いビッグスイッチ、ユニバーサルアームを用い下肢でのスイッチ利用へと変更した。また、粘性の高い唾液の貯留が顕著であった為、持続低圧吸引器を導入した。頸部・体幹機能低下により座位困難となった為、ヘッドマスターカラーやティルト・リクライニング可能な車椅子を導入した。<BR>(平成19年10月)MMT:上肢1~2下肢2、ADL:頸部保持・座位困難、ベッド上全介助レベル。家族介助下にてP-トイレ、車椅子乗車まで可能。コミュニケーション:アイコンタクト、文字盤、レッツチャット使用。意思伝達装置として、伝の心を導入しメールやインターネットの利用を可能とした。平成19年11月現在では病状進行みられず、ADL維持されている。<BR>【まとめ】ALSは進行性の難病である。その為、定期的にfollow upされていないと、身体機能低下に伴い環境不適応となり在宅生活を送ることが困難となる。このことから訪問リハビリの重要性の高い症例であるといえる。在宅環境の調整は作業療法士が主体となる事が少なくない。しかし在宅環境の調整は様々な視点からトータルサポートを行うことが望ましい。本症例においては意志伝達装置等に加え、理学療法士の介入により持続低圧吸引器やヘッドマスターカラーを導入する事で、より円滑な在宅生活が可能となったと考える。また病状の進行が与えるご家族・ご本人への不安は測りしれないものとなる。しかし、様々な福祉機器やサービスに加え、呼吸困難に対処する医療機器の情報提供と導入は、ADL維持だけでなくQOLや精神面での大きなサポートとなると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), E0333-E0333, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544178432
  • NII論文ID
    130005016051
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.e0333.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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