脛骨骨幹部骨折に伴う足関節可動域制限の特徴と対応
書誌事項
- タイトル別名
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- 筋挫滅と炎症過程に着目し早期改善を得た一症例
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説明
【はじめに】足関節・足部の可動域制限を呈する下腿骨折では、膝屈曲位に比べ伸展位での腓腹筋短縮が問題となる印象を受ける。しかし、脛骨骨幹部骨折では受傷機転や手術侵襲による下腿深層筋の損傷が強く、膝屈曲位での足関節背屈可動域制限が主要問題となることを多く経験する。今回、筋挫滅と炎症過程に着目し理学療法を実施した結果、早期職場復帰が可能になった症例を経験した。考察を加え報告する。<BR>【症例紹介】35歳男性、機械整備士。平成18年6月25日、駅構内の階段から転落。左脛骨骨幹部骨折と診断され、7月3日髄内釘による骨接合術施行。<BR>【理学療法経過】(血液データ単位、白血球:/μl、CRP:mg/dl、CPK:IU/l、以下単位省略)<BR>術後1日の血液データは、白血球10000、足背屈可動域は膝屈曲位-10°膝伸展位-15°。術後5日、白血球6400、CRP4.05、CPK163。足背屈可動域は膝屈曲位-5°。白血球・CRP・CPKいずれも高値を示し、炎症初期段階と考えられた。膝窩部から下腿後面、下腿・足部前面に広範囲の内出血痕を認めた。可及的全荷重は許可されたが、下腿後面筋の伸張痛が強く過重不可。この時期の下腿後面筋に対する直接的介入は避け、大腿内転筋群の柔軟性維持を行い静脈・リンパの循環確保を試みた。術後1週後、白血球7000、CRP1.49、CPK170、足背屈可動域は膝屈曲位0°。荷重時痛が軽減し、1/3部分荷重が可能となった。白血球、CRPの順に沈静化に向かうが、CPKの低下は見られず、侵食された筋細胞よりCPKが流出している炎症中期段階と考えられた。術後2週、白血球6300、CRP0.27、CPK110。CPKの低下がみられ、筋からの流出も沈静化に向かい炎症の最終段階と推測された。足背屈可動域は膝屈曲位15°膝伸展位10°と改善が得られ、杖なし歩行可能。10m歩行23秒19歩、3分間歩行距離140mとなった。この時期に、筋線維の再生が開始されると考えられ、寒冷療法から温熱療法へ移行し、下腿筋群への積極的な徒手刺激を施行した。術後3週、白血球7100、CRP0.19、CPK82。炎症反応は沈静化したと思われ、動作獲得に適した時期と考え、歩行・階段昇降などの積極的な動作練習を取り入れた。術後4週、院内杖なし歩行自立。10m歩行11秒17歩、3分間歩行距離195m。術後5週、屋外杖なし歩行自立にて退院。術後6週、職場復帰。術後7週、足背屈可動域は膝屈曲位20°。3分間歩行距離240mに改善した。<BR>【考察】脛骨骨幹部骨折では骨折部位に付着する下腿深層筋の損傷が強く影響し、術前にはみられなかった内出血痕が術後出現した。髄内釘手術侵襲により骨髄液が下腿コンパートメント内に流出し炎症反応が助長されたと考えた。元来、白血球やCRP値を炎症所見として捉えてきたが、炎症組織が筋である場合、CPK値を参考に炎症過程に即した対応が早期改善の要因であると考えた。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), C0272-C0272, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680544187392
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- NII論文ID
- 110006374011
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可