加齢による下肢筋の筋厚と運動機能の低下率の違い

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【目的】高齢者の筋萎縮や運動機能低下に関する報告は多いが、若年者と比較して高齢者の筋厚や運動機能がどの程度低下しているかを詳細に比較した報告は少ない。本研究の目的は、若年者の基準値から高齢者の筋力、筋厚、敏捷性、バランス、伸張性の低下率を計算し、低下率の違いを比較検討することである。<BR>【対象と方法】若年群として健常男子学生47名(平均年齢20.5±1.1歳)と高齢群として歩行が自立している施設入所虚弱高齢者16名(男性6名、女性10名、平均年齢83.3±5.4歳)を対象とした。対象者には本研究の目的を説明し同意を得た。筋力は等尺性膝屈伸筋力をトルク体重比として求めた。筋厚の測定には、超音波画像診断装置(GE横河メディカルシステム)を用い、大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋、半膜様筋、大腿二頭筋、大内転筋、腓腹筋、ヒラメ筋の筋厚を計測した。バランステストしてFunctional Reach Test(FRT)、敏捷性テストとして立位と座位での5秒間の最大ステッピング回数を求めた。伸張性テストとしてハムストリングスと腓腹筋の伸張性を測定した。ハムストリングスの伸張性は背臥位で股関節90度屈曲位からの膝伸展角度を測定した。腓腹筋の伸張性は背臥位、膝伸展位での足関節背屈角度を測定した。若年群の各測定データを基準値として高齢群の測定値の低下率を計算し比較した。統計学的分析には、反復測定分散分析と多重比較を用いた。<BR>【結果と考察】最も低下率が大きかったのは膝伸展筋力(76%)と膝屈曲筋力(71.7%)であった。膝屈曲と伸展筋力の低下率に有意差はなかった。大腿四頭筋各筋の筋厚の低下率は大腿直筋(58.9%)、中間広筋(52.1%)、外側広筋(51.5%)、内側広筋(47.6%)の順で大きかったが各筋間に有意な違いはなかった。大腿後面の筋の筋厚は半膜様筋(37.9%)、大腿二頭筋(42.6%)、大内転筋後部線維(31.2%)であり、大腿四頭筋よりも低下率は有意に小さかったがこの3筋間に有意な違いはなかった。膝屈伸筋共に筋力の低下率が筋厚の低下率よりも有意に大きかった。筋厚の中で最も低下率が低かったのはヒラメ筋(18.4%)であり次いで腓腹筋(26.4%)の筋厚であった。FRTの低下率は47.1%であった。ステッピング回数の低下率は、立位58.2%、座位38.1%であり、立位が座位に比較し有意に大きかった。ハムストリングスの伸張性は73.2%、腓腹筋の伸張性は60.4%低下していたが、両者に有意な差はなかった。本研究結果より、高齢群の膝屈伸筋力が70%以上低下し、膝屈伸筋の筋厚が37.9-58.9%低下しているにもかかわらず、下腿三頭筋の低下率は18.4-26.4%と保たれており、膝屈伸筋力の低下している虚弱高齢者の歩行自立のためには下腿三頭筋、特にヒラメ筋の機能が重要である可能性が示唆された。

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