肩甲帯屈曲伸展の別法による関節可動域検査の有用性について

  • 松本 大士
    緑園ゆきひろ整形外科リハビリテーション科
  • 吉岡 慶
    緑園ゆきひろ整形外科リハビリテーション科
  • 吉沢 剛
    緑園ゆきひろ整形外科リハビリテーション科
  • 伊藤 のぞみ
    緑園ゆきひろ整形外科リハビリテーション科
  • 宇田川 慎介
    緑園ゆきひろ整形外科リハビリテーション科
  • 池田 直樹
    横浜リハビリテーション専門学校理学療法学科

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説明

【目的】肩甲骨は胸郭上に浮遊しているため自由度が高く、その計測方法は簡便ではない。日本整形外科学会が定義する関節可動域検査法(以下、従来の方法とする)において、特に肩甲帯屈曲伸展の計測では基本軸が両側の肩峰を結ぶ線、移動軸が頭頂と肩峰を結ぶ線とあり、検者は被検者の頭頂側からの計測となるため、臨床での有用性が問われる。今回は肩甲帯屈曲伸展をDevita(1990)の報告による肩甲帯の動きを距離によって計測する簡便な方法と従来の方法にて計測を行い、その相関について調査し、臨床でのDevitaによる計測方法の有用性について検討した。<BR>【対象】対象は肩関節に既往のない健常成人9名(男性4名、女性5名)、利き手側9肢とした。平均年齢は35.2±11.0歳であった。<BR>【方法】肩甲帯中間位、最大屈曲位、最大伸展位での関節可動域検査を従来の方法とDevitaの報告による方法とで計測した。Devitaの方法はTh3棘突起より肩峰後角までの距離を計測し、肩甲棘の延長線上にある肩甲骨内側縁から肩峰後角までの距離で除した値を計測値としたものである。この2つの方法の結果の関連について検討した。統計処理にはスピアマンの順位相関係数の検定を用いた。<BR>【結果】Devitaの方法による計測値と従来の方法による測定角度との間に有意な相関が認められた(r=0.87,p≦0.01)。<BR>【考察】今回の結果から肩甲帯屈曲伸展可動域検査を従来の方法による角度の計測だけではなく、Devitaの報告による長さで計測する方法の有用性が示唆された。脊柱から肩甲骨までの距離を計測する方法は簡便である反面、身長や肩幅の違いにより計測した値を被検者間で比較できるものではなかった。臨床では被検者内の左右差の比較にのみ利用できるものであった。しかし、今回のDevitaの方法は距離を肩甲骨の横径で除することにより身体長差を解消し、被検者間でも比較できる計測値となった。また、これらが従来の方法の定義にある頭頂側からの計測に比べ、簡便で被検者の計測肢位を指定しないことも、より実用的な検査方法であると考える。しかし、以前行った我々の研究では、この計測方法での検者間、検者内信頼性に低い結果を認め、計測方法に習熟した技術が要求される。今後の検討課題として年齢、性差などの要因を考慮しながら可動域幅や基準となる中間位の位置を長さによる尺度で標準化することが必要と思われる。<BR>【まとめ】肩甲帯屈曲伸展の関節可動域検査を従来の方法とDevitaの方法とで計測し、関連について検討した。結果は2つの方法に有意な相関が認められ、Devitaの方法に臨床上の有用性が示唆された。今後の検討課題としてDevitaの方法での計測値を標準化することが挙げられる。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C0113-C0113, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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