多裂筋強化エクササイズにおける下肢外転の有無による酸素化ヘモグロビン量の変化

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抄録

【目的】<BR> 筋々膜性由来の腰痛症の病態は依然不明な点が多いが,腰部多裂筋のコンパートメント症候による筋血流障害が一因となるとの報告がある.一方,筋々膜性腰痛以外でも二次的合併症として筋硬結や体幹可動域の低下を訴える者は少なくなく,この様な症状を有する者では筋内圧も上昇しているとの報告もある.したがって,臨床場面では筋硬結部や可動域の即時的改善は極めて重要な腰痛改善因子となる.<BR> 現在,筋の伸張制限は一般には筋阻血が原因である場合が多く,筋ポンピング作用による血流改善で伸張性も改善可能と考えられている.局所筋の血流を捉える一指標として,近年近赤外線分光法による評価が行われるようになった.現在,不明な点も少なくないが,末梢組織内の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの和(総酸素化ヘモグロビン量)が組織内の血流量を反映すると考えられている. <BR> 本研究の目的は,体幹伸展運動時の多裂筋血流量変化が体幹可動性に与える影響を検討し,より有効な腰痛症運動療法の一助を得ることである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,健常成人10名(男性5名,女性5名,年齢24.7±4.0歳)とした.<BR> 測定は,酸素化ヘモグロビン量は近赤外線分光器(浜松ホトニクス社製,NIRO-300)を用いて計測した.測定肢位は,壁面に設置したパイプ椅子上椅座位とし,両上肢を胸部前方で組み,両膝関節90°屈曲位として体幹伸展運動を行わせた.測定部位は,第5腰椎より2横指外側の多裂筋部にプローブを設置した.測定条件は,(1)3秒の体幹伸展運動と10秒の休息,(2)3秒の体幹伸展運動と同時の下肢外転運動と10秒の休息を各々5回ずつ繰り返した.各々の測定には,20分間の休憩を挟み,測定前後にFinger Floor Distance(以下,FFD)と体幹伸展可動域を計測した.<BR>統計学的分析にはWilcoxson t-testを使用し,有意水準を5%未満として検討した.<BR>【結果と考察】<BR> 結果,総酸素化ヘモグロビン量は両測定条件ともに収縮時には低下し,休息時には有意な上昇を認めた.また,(2)の条件では,(1)に比べ酸素化ヘモグロビン,脱酸素化ヘモグロビンともに有意な上昇を認めた.さらに,測定前後でFFD,体幹伸展可動域ともに有意な拡大を認めた.<BR> 以上の結果,一般には筋内圧の上昇の少ない座位で健常者を対象とした運動でも,体幹伸展運動による血流増加とそれによる多裂筋伸張性の改善が認められた.また,本トレーニングは腰痛症に対する腰部伸筋の伸長性改善による体幹可動域改善のみならず筋力強化にもつながるトレーニング法であり,今後腰痛症者を対象として検討する必要はあるものの体幹伸展運動時に股関節外転を同時に行う(2)の方法がより有効となると考えられた.<BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), C0331-C0331, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544343680
  • NII論文ID
    130005013969
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.c0331.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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