若年健常男性における喫煙が肺機能へ及ぼす影響

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抄録

【目的】これまでの喫煙調査では中高年者を対象とした調査が主流であり,若年者を対象とした調査研究は非常に少ない.従って,若年者における喫煙の早期・短期暴露による生体反応は不明である.本研究の目的は,若年健常男性における喫煙習慣が肺機能へ及ぼす影響について調査することである.<BR>【方法】対象者には,最初に問診を行い,喫煙習慣のある学生9名を喫煙群,喫煙群と同等の年齢と体格を有する非喫煙者9名を非喫煙群とした.喫煙群と非喫煙のそれぞれ背景は,平均年齢 24.7±5.0歳,22.8±4.2歳,平均身長171.0±5.4cm,171.9±6.0cm,平均体重71.4±18.4kg,70.4±9.3kgであった.調査方法は,問診による呼吸器の自覚症状の有無とスパイロメトリーによる肺機能検査を実施した.喫煙群と非喫煙群間で平均値の差の検定を行った。さらに喫煙群間において,各測定値と喫煙指数(Brinkmann Index,BI)の関係を比較した.<BR>【結果】閉塞性換気障害の指標であるPEFの測定値において,喫煙群と非喫煙群間に統計学的有意差を認めた(p<0.05).FEV1.0,FEV1.0%,V(dot) 50/V(dot)25の測定値には喫煙群と非喫煙群間で統計学的な有意差は認められなかった.またVC,%VC,の測定値においても,有意差は認めらなった.<BR>喫煙群間の各測定値とBIの比較において,V(dot)50/ V(dot)25で有意な正の相関関係(p<0.05)を,FEV1.0%で負の相関傾向を認めた(p<0.1).また%VCの測定値においても正の相関関係が認められた(p<0.05).<BR>【考察】喫煙群においてBIと閉塞性換気障害の一指標であるV(dot)50/V(dot)25ならびにFEV1.0%で相関関係を認めた(r=0.654, r= -0.558).これまでの研究では,BIが400を超えると顕著に閉塞性の障害が見られると報告されていた.しかし,本結果ではBI:400未満の若年喫煙者においても閉塞性換気障害の傾向を示している.これにより,BI:400未満のような早期ならびに短期の喫煙者においても閉塞性換気障害を誘発する可能性が十分にあることを示唆している.<BR>【まとめ】これまで,喫煙者の呼吸機能障害は,若年者ではなく中高年者に焦点が向けられていた.そのため,本研究では若年喫煙者における呼吸機能への影響について調査した.その結果,若年者においても喫煙に対する感受性が高ければ,喫煙の影響が強く現れる可能性があることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), D1244-D1244, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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