腰椎椎間板ヘルニアの責任高位同定についての一考察

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【はじめに】腰椎椎間板ヘルニアの責任高位を同定するにあたっては、MRIなどの画像所見とともに臨床所見が重要である。ガイドラインでは臨床所見の中で自覚的疼痛部位がもっとも診断精度の高いパラメータで、他の項目の診断的価値は低いとされている。しかし、多椎間にわたるヘルニアでは疼痛の部位が不明確であったり、複数の神経領域にわたる場合がしばしばあり、自覚的疼痛のみでは同定に難渋するケースが存在する。そこで、今回われわれは疼痛部位以外のパラメータについて検討したので若干の考察とともに報告する。<BR><BR>【症例】症例1:48歳、男性。MRI矢状断像ではL3/4、L4/5、L5/S1間にヘルニアを認めた。自覚的疼痛は皮膚デルマトームにて右L4およびL5領域に認められた。MMTでは下肢筋力は全て正常であった。腱反射は膝蓋腱反射(以下、PTR)が減弱しており、アキレス腱反射(以下、ATR)は正常であった。表在感覚はL3、L4およびL5領域で鈍麻が認められた。大腿神経伸張テストは右側で陽性であった。神経根ブロック(以下、SRB)をL4に施行したところ、症状はほぼ消失した。症例2:20歳、男性。MRI矢状断像ではL4/5、L5/S1間にヘルニアを認めた。自覚的疼痛は右S1領域に認められた。MMTでは前脛骨筋の筋力低下が認められたが、下腿三頭筋は正常に保たれていた。PTR、ATRともに正常であった。表在感覚は正常であった。SRBをL5に施行したところ、症状は80%軽減した。症例3:74歳、女性。MRI矢状断像ではL3/4、L4/5、L5/S1間にヘルニアを認めた。自覚的疼痛は左L5およびS1領域に認められた。MMTでは下腿三頭筋の筋力低下がみられたが他は正常であった。PTR、ATRはともに正常であった。表在感覚はL5、S1領域で鈍麻であった。SRBをS1に施行したところ、症状はほぼ消失した。<BR><BR>【考察とまとめ】今回は責任高位同定に最も有用な検査法とされているSRBの効果を指標として検討した。症例1では自覚的疼痛はL4およびL5領域に認められたものの、L5に関する他の所見はみられなかった。L4支配の筋力は正常であったが、同髄節レベル支配のPTRにおいて減弱が認められ、これがパラメータとなった。症例2では自覚的疼痛はS1領域に認められたがS1に関する他の所見はみられなかった。L5支配の前脛骨筋に筋力低下が認められ、これがパラメータとなった。症例3では自覚的疼痛はL5、S1領域にあったが、L5の他の所見はみられなかった。S1支配のATRは正常であったが、同髄節レベルの支配による下腿三頭筋の筋力低下が認められ、これがパラメータとなった。このように責任高位を自覚的疼痛のみで同定することが困難なケースが存在する。したがって、問診による情報や他の臨床所見を得ることによって、総合的に判断されなくてはならない。今回はパラメータの一致は得られなかったが、今後はより精度の高いパラメータについて検討していきたい。<BR>

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