腰椎椎間関節症患者に対する腰椎屈曲体操の効果

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  • 脊柱アライメントからみた効果

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【目的】腰椎椎間関節症(以下LFS)の多くは腰椎の過前彎を呈しているため,腰痛の発生要因の1つとして脊柱アライメント(以下アライメント)不良が考えられる.我々は,第42回日本理学療法学術大会において,健常者の胸椎後彎角,腰椎前彎角および仙骨傾斜角を分析し,健常者のアライメントについて報告した.今回,LFSと診断された患者のアライメントと可動性を評価し,健常者との比較及び治療により変化が得られるかどうかを検討したので報告する.<BR>【対象】本研究の趣旨を理解し同意が得られた,神経根症状がなく,腰椎伸展時に腰痛があり,画像所見からLFSと診断した外来患者18名,平均36.8歳を対象とした.当院でのLFSに対する運動療法は主にMcKenzieの屈曲体操を行い,治療後は姿勢指導も行った.今回の調査は初診時の治療前後で検討した.<BR>【方法】アライメントの測定には,Index社製スパイナルマウス(以下SM)を使用し,立位姿勢(以下立位)と立位最大前屈姿勢(以下前屈)の胸椎・腰椎カーブ,仙骨傾斜角,及び前屈可動域(以下可動域)を求めた.SMの測定値は,後彎角を正,前彎角を負で表記した.腰痛に関してはVASを用いた.VAS及びSMの測定は,屈曲体操前後に測定し改善程度についても調べた.<BR>【結果】1.健常者とLFS患者の関係:アライメントにおいて,立位ではLFS患者は仙骨傾斜角が健常者の14.2±6.1度に対し,8.2±4.5度と有意に減少していた.しかし胸椎後彎角,腰椎前彎角には有意差を認めなかったことから,LFSでは上位腰椎が後方へシフトしたアライメントを呈していることになる.一方前屈でも仙骨傾斜角はLFS患者が有意に減少していた.可動域をみると,LFS患者は胸椎後彎角と腰椎前彎角の動きが健常者に比して有意に低下していた.すなわち,前屈において健常者は腰椎の前彎を減少し,胸椎を後彎させて行うが,LFS患者は胸腰椎部をあまり動かしていない. 2.体操前と体操後の関係:腰痛については,屈曲体操後は平均81.2%改善していたが,立位アライメントでは各角度ともに有意差を認めなかった.しかし仙骨傾斜角は8.2±4.5度から10.0±6.0度に増加し,腰椎前彎角が-25.6±7.8度から-23.8±10.9度と減少していた.すなわち,上位腰椎が前方に移動し、健常者のアライメントに近づいている傾向にあった.可動域についても有意差はみられなかったが,胸椎後彎角は8.1±15.7度が16.1±15.9度へ増加していた.<BR>【考察】今回の結果からLFS患者のアライメントは,上位腰椎が後方へシフトした様相を呈していた.可動域については,胸腰椎はあまり動かずに前屈を行っており,健常者とは異なる特異的なアライメントを呈していた.このアライメントは,屈曲体操により有意差は見られないものの,仙骨傾斜角の減少に働き,上位腰椎が前方に移動し健常者のアライメントに近づく傾向にあった.これが腰痛改善に繋がっていると推測された.

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