円背姿勢を呈する高齢者の体幹可動性と体幹筋力との関係

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【目的】高齢者の姿勢変化で最も多いものは円背姿勢であるといわれている(高井ら、2001)。しかし、円背姿勢と体幹筋力の関係については、背筋力との相関を認めた報告(宮腰ら、2005)や円背群と非円背群の体幹筋力に差はないとする報告(吉田ら、2003)などがあり統一した見解を得られていない。筆者らは高齢者の円背姿勢を修正する際の体幹の可動性と体幹伸展筋力に関係があるのではないかと仮説を立てた。本研究は高齢者の円背姿勢を修正する能力と体幹筋力との関係を明確にすることを目的とした。<BR><BR>【方法】対象は円背を呈する高齢者14名(男性3名、女性11名)とした。平均年齢は77.7±5.7歳、身長は150.2±6.5cm、体重は57.0±8.5kg、BMIは25.2±2.7であった。脊椎の椎体間の角度を体表面上から測定できるSpinal Mouse(Idiag AG, Switzerland)を用い、安静坐位、体幹自己修正坐位、上肢を用いた体幹修正坐位(以下、上肢修正坐位)にて胸椎後彎角および腰椎前彎角を測定した。上肢修正坐位での胸椎後彎角および腰椎前彎角に対する体幹自己修正坐位での脊柱彎曲の変化率を算出し、解析に使用した。体幹屈曲および伸展筋力を等尺性体幹筋力測定装置GT-350(OG技研社)を用いて測定し、体重で除して解析に使用した。統計学的分析にはピアソンの相関係数を用い、危険率5%未満を有意とした。なお、本研究はサザンクリニック整形外科・内科倫理委員会の承認を得て行われた。<BR><BR>【結果】胸椎後彎角は安静坐位で44.1±15.0°、体幹自己修正坐位で38.7±13.4°、上肢修正坐位で35.6±14.3°、胸椎後彎変化率は68.3±83.8%、腰椎前彎角は安静坐位で-9.3±21.4°、体幹自己修正坐位で1.1±14.9°、上肢修正坐位で-0.9±15.9°、腰椎前彎変化率は97.6±58.8%であった。体幹屈曲筋力は2.40±0.55N/kg、体幹伸展筋力は4.53±1.32 N/kgであった。胸椎後彎変化率と体幹伸展筋力(r=0.62)、腰椎前彎変化率と体幹屈曲筋力(r=-0.54)の間に有意な相関を認めた(p<0.05)。<BR><BR>【考察】本研究の結果より、円背姿勢を修正する能力が低い者ほど体幹筋力が弱いことが明らかとなった。特に円背姿勢を呈する高齢者の胸椎後彎角増大を改善するには体幹伸展筋力が大きく寄与する可能性が示された。また、体幹屈曲筋力が弱い者ほど姿勢修正時の腰椎前彎変化率が増大することから、弱化した筋の部位から姿勢を修正する動作に違いが生じる可能性があると考えられる。今後はより効率的に円背姿勢を改善するため、さらに詳細な動作パターンの分析が必要と考える。<BR><BR>

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