膝関節伸展制限が歩行時の床反力に与える影響

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【はじめに】変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は疼痛,関節不安定性,関節可動域制限,内反・外反変形をきたす疾患で,疼痛や関節不安定性により歩行障害をきたすと言われている.膝OAの歩行における運動学的特徴として,上下方向床反力の平坦化,左右方向への動揺性の増大,歩幅・歩行速度の低下などが指摘されている.本研究では,健常人における両側の膝関節伸展制限が歩行時の床反力にどのような変化をもたらすかを検討し,膝関節伸展制限が膝OA患者の歩行にどのように影響しているかを検討した.<BR><BR>【方法】対象は,特筆すべき疾患を有しない若年健常男性17名を対象とした.内訳は平均年齢21.8±0.8歳,平均身長173.6±5.5cm,平均体重67.9±9.9kgであった.研究目的,方法については書面にて十分説明を行い,同意を得た.計測は三次元動作解析システムと床反力計2枚を用いた.歩行条件は伸展制限なし,ありのそれぞれで,cadence(step/min)を60,80,100と変化させ,計6条件で計測した.膝関節の伸展制限は,被験者の両膝関節にテーピングを用いることで30°の伸展制限を設定した.計測は各条件で3回行った.得られたデータから,歩行速度,歩幅,右膝関節屈伸角度,右立脚期の上下方向床反力,上下・左右方向の重心位置,体幹側屈角度を算出した.統計学的分析は繰り返しのある二元配置分散分析を行い,多重比較検定にはSheffe's検定を用いた.なお統計学的有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【結果】膝関節伸展制限により,歩行速度・歩幅は有意に低下した(p<0.01).右膝関節屈伸角度では,立脚初期の屈曲の第1ピーク値,立脚中期~後期にかけて伸展の第1ピーク値をとり,この差を比較したところ,有意に低下した(p<0.01).右立脚期の上下方向床反力では,第1ピーク値と谷ピーク値の差および,第2ピーク値と谷ピーク値の差は有意に低下し(p<0.01),平坦化した.上下方向重心位置の変動は有意に低下し(p<0.01),左右方向の重心位置・体幹側屈角度の変動は有意に増加した(p<0.01).cadence間の比較ではcadenceが低下することで,伸展制限ありと同じ傾向になった.<BR><BR>【考察】立脚期において,膝関節の伸展制限により,立脚初期の膝関節屈曲位から立脚中期の膝関節伸展位にかけての膝関節伸展動作が低下し,重心の上方移動が低下する.このことから,上方への加速度が低下し,このときの上下方向床反力のピーク値は低下し,床反力の平坦化が起きる.膝OA患者を対象とした研究では,上下方向床反力の平坦化,左右方向への動揺性の増大などの特徴が指摘されているが,今回の研究から,膝関節伸展制限が膝OA患者の歩行に影響を与えることが示唆された.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544534400
  • NII Article ID
    130004580951
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p3414.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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