肩甲骨内転エクササイズの脊柱アライメントに対する影響

Description

【目的】<BR>上肢を挙上する時には、肩甲骨と体幹が連動して運動をおこす。そのため、円背姿勢などによって体幹の運動が減少した場合、上肢の関節可動域は低下するかもしれない。たとえば、競泳選手で円背姿勢は多くみられるが、その状態でのストローク動作が肩関節の障害を起こすことも考えられる。これを予防するためには、脊柱アライメントを正常に保つためのエクササイズが重要であろう。円背の選手では、肩甲骨が外転していることが多く、適正な位置にすることが必要であると考えた。本研究の目的は肩甲骨内転エクササイズが脊柱アライメントに影響し、胸椎の後弯を減少させられるかを確認することである。 <BR>【方法】<BR>対象は、本研究の趣旨に同意を得られた肩関節と脊柱に疾患を有さない健康な男性10名とした。平均年齢(±SD)は23.0±0.7歳であった。<BR>まず初日に脊柱アライメントを測定した。脊柱アライメントの測定にはスパイナルマウス(Idiag AG.Switzerland)を用いた。この装置はC7からL1までの脊椎アライメントを矢状面で測定できる装置で、この装置を脊椎傍線上に沿わせて滑らせることで、各椎体のなす角(椎体角度) を測定することができる。測定によって得られた値をもとに、C7~Th12の椎体角度の総和を胸椎角とし、Th12~S1の総和を腰椎角とした。その後、対象に1週間、肩甲骨内転エクササイズを行わせた。エクササイズはAndrewsら(1994)の方法を参考にし、両上肢を下垂位として肩関節が伸展しないようにして肩甲骨内転運動を行わせた。この運動を、1日20回を3セット、1週間行わせた。1週間後に再び脊柱アライメントの測定を行い、得られた値を初日の値と比較した。統計学的検定には対応のあるt検定を用い、危険率5%未満を有意とした。なお、この研究はH大学の倫理審査委員会の承認を得て行った。<BR>【結果】<BR>エクササイズ前の胸椎角(±SD)が43.57±5.18°だったのに対し、エクササイズ後の胸椎角は41.14±6.73°であった。胸椎角はエクササイズにより2.43°減少したが、差はみられなかった。また、エクササイズ前の腰椎角が20.71±7.70°だったのに対し、エクササイズ後の腰椎角は19.00±7.21°であった。エクササイズによって、1.71°減少したが、差はみられなかった。<BR>【考察】<BR>本研究より、肩甲骨内転エクササイズが脊柱アライメントに影響をもたらすかどうかは明らかにならなかった。その理由として、対象が比較的年齢の若い健康な男性であったため、脊柱の変形を有するような者はおらず、姿勢が良好であったこと、さらに介入期間が1週間と短かったことなどが考えられる。しかし、今回の結果より、胸椎の後弯が減少するだけでなく、腰椎の前弯も減少する傾向を示したことは興味深い。肩甲骨エクササイズによって、脊柱がより直線に近い状態になり、体幹が安定する可能性もある。今後、上記の問題点を解決し、さらなる研究を進めたい。<BR>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544606080
  • NII Article ID
    130005014016
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.c0901.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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