重錘トレーニングにおける負荷パターンの違いが筋肥大におよぼす影響
説明
【目的】<BR> 椅座位での重錘を用いた大腿四頭筋の筋力増強法は,臨床で多用されてきた.しかしその負荷トルクは運動の終末域で最大となることが知られており,屈曲約70°で最大となる筋の長さ張力関係に基づく筋のトルクパターンとは一致しない.我々の先行研究で,下腿が水平となる時点の膝関節屈曲角度が約70°となる身体の傾斜により,椅座位より大きな負荷トルクを加えることが可能となった.さらに6週間のトレーニングの結果,椅座位でのトレーニングと比較して最大トルクが有意に増大していた.一方,トレーニング効果の要素として筋肥大がある.近年のリハビリテーション期間の短縮にともない,医療機関でのリハビリテーションによって筋肥大が得られない時期に退院となる症例が増加している.従って継続的に集団トレーニング,在宅での自主トレーニングにおいて簡便で効果的な方法の必要性がさらに高まっている.今回我々は,6週間の本トレーニングによる筋肥大の状態を椅座位でのトレーニングと比較した.<BR>【方法】<BR>事前に実験の目的と安全性について説明し,同意の得られた健常成人24例(男女各12例,年齢21.4歳,身長1.63m,体重59.1kg(平均))を対象とした.<BR>筋肥大の指標として筋厚を用いた.筋厚は筋の横断面積と相関があり,計測が簡便なため採用した.超音波診断装置(MEDISON社:SONOACE PICO)を使用し,仰臥位,膝伸展位にて,前部大腿最大部位(遠位60%)を計測し,これを大腿四頭筋筋厚と定義した. 予め等速性運動機器(Biodex System 3)にて最大トルクを計測した.慣性力を最小とするため運動速度は30°に設定した.この最大トルクの80%を10RMと定義した. 我々の先行研究で,下腿が水平となる時点の膝関節屈曲角度が約70°となる設定は仰臥位で股関節70°屈曲位であった.今回,この肢位の大腿,下腿の傾斜が設定可能な架台を作成した.<BR> 被験者を無作為に2群に分け,仰臥位(以下,臥位群),椅座位(以下,座位群)でトレーニングを行わせた.期間は6週間,頻度は3日/週,回数は10回を1セットとし,3セット/日,強度は10RMとした.<BR> なお,本研究は学内臨床試験倫理審査委員会の承認の下,実施した.<BR>【結果】<BR> 臥位群の大腿四頭筋筋厚の増加率は14.6%であり,座位群の4.4%と比較して有意に高値を示した.<BR>【考察】<BR> 一般に筋肥大の発現には,8~12週間のトレーニング期間が必要といわれている.しかし,本研究ではトレーニング開始6週後において,明らかな筋肥大を認めている.我々の先行研究で得られたトレーニングの短期効果,すなわちトルクの増大に加え,長期効果も証明されたと考える.今後,健常高齢者での検証,臨床応用のためシステムの改良を図る.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A1O2009-A1O2009, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680544668544
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- NII論文ID
- 130004579838
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可