脳卒中後片麻痺例でのipsilateral pushingに関する早期予後予測の試み
書誌事項
- タイトル別名
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- 多重ロジスティック回帰分析による検討
説明
【目的】本研究の目的は、脳卒中後片麻痺(以下、片麻痺)例でのipsilateral pushing(以下、IP)について、発症後早期からの予後予測が可能かどうか多重ロジスティック回帰分析により検討することであった。<BR>【方法】対象は、脳卒中(くも膜下出血は除外)発症後1週間以内に理学療法(以下、PT)が開始され、PT開始時よりIPを呈した片麻痺例の内、発症後2ヵ月以上の経過観察が可能であった片麻痺例70例とした。各症例の基本属性として、年齢、性別、病型(出血、梗塞)、皮質病変の有無、麻痺側の5項目、さらにPT開始時データとして、麻痺側下肢Brunnstrom stage、麻痺側下肢表在感覚障害(以下、表在感覚障害)、麻痺側下肢深部感覚障害(以下、深部感覚障害)、改変新Barthel index、失語の有無、半側空間失認(以下、USN)の有無、認知症の有無の7項目、計12項目について、発症後2ヵ月時点でのIP有り群と無し群の間で2群比較を行い、有意差が認められた項目を独立変数、発症後2ヵ月時点でのIP予後(有無)を従属変数としたステップワイズ法による多重ロジスティック回帰分析を実施した。なお、多重ロジスティック回帰分析の実施に先立ち、多重共線性の問題を回避するため独立変数間の相関の有無を検討し、互いに強い相関を有する独立変数が存在した場合は、どちらか一方を削除した。全ての統計処理は、SPSS 14.0J for Windowsにて実施し、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】2群比較で有意差が認められた項目は、年齢(p<0.001)、表在感覚障害(p=0.014)、深部感覚障害(p=0.008)、改変新Barthel index(p<0.001)、USNの有無(p=0.002)、認知症の有無(p<0.001)の6項目であった。この内、表在感覚障害と深部感覚障害は、非常に強い有意な相関(ρ=0.945、p<0.001)を有していたので、表在感覚障害を削除した5項目を独立変数として採用した。多重ロジスティック回帰分析の結果、年齢(オッズ比:0.921、p=0.016)、USNの有無(オッズ比:0.183、p=0.008)、認知症の有無(オッズ比:0.188、p=0.011)の3項目を有意な独立変数とするモデルが構築された。本モデルは、年齢が高く、USNや認知症を有する片麻痺例ほどそうでない片麻痺例と比較して発症後2ヵ月時点でのIP予後が不良というものであり、先行研究結果等から考えても著しい矛盾の無いモデルと思われたため、結果として採用した。本モデルによる発症後2ヵ月時点でのIP予後の正判別率は、80.0%(予後不良及び予後良好の正判別率:82.4%、77.8%)であった。<BR>【考察】今回構築されたモデルにより、片麻痺例の発症後2ヵ月時点でのIP予後を発症後1週程度の早期に約8割の精度で予測出来る可能性が示唆された。IP予後については、これまで適切な予測法が殆ど無く、今回構築されたモデルは、IP予後の早期予測法として臨床上有益なものの一つと成り得る可能性がある。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), B0129-B0129, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680544681088
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- NII論文ID
- 130005013681
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可