座位足開閉テストを用いた転倒予測の試み

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抄録

【目的】臨床での転倒評価はTimed“Up&Go”Test やFunctional Reach Testが用いられることが多いが、測定時に立位や歩行などの動作遂行を要求されるため、評価自体に身体能力による制約やリスクを伴う。本研究では、座位で簡便に実施できる座位足開閉テストを用いて高齢者の転倒について調査し、本テストが転倒予測の一指標として応用可能か否かについて検討することを目的とした。<BR><BR>【対象】被検者は当院外来高齢者75名(男性12名、女性63名:平均年齢78.3±5.3歳)で、歩行レベルは全員自立であった。なお、中枢性運動麻痺の既往および重症腰痛・下肢痛者は除外し、全被検者に本研究の主旨と内容を説明し同意を得たのち測定を実施した。<BR><BR>【方法】測定前に、被検者を過去1年間に転倒経験のある者(以下転倒群)と転倒経験のない者(以下非転倒群)に分けた。転倒は、「本人の意思からではなく、地面またはより低い面に身体が倒れること」とするGibsonの定義を用いた。座位足開閉テストは、1)被検者はパイプ椅子上椅座位で両足を自作した簡易測定ボード(縦30cm×横30cm×厚さ1cm)の中央に揃えてのせ、上肢は椅子の側面端を把持させた。2)検者の合図で被検者は可能な限り速く両足を左右同時に開き、母趾でボード外の床をタッチし、すばやく元の位置に戻す。これを1回と数え、10秒間の施行回数を測定した。測定は、1回の練習後2回実施し、最大値を施行回数として採用した。その際、母趾が床に接地しなかった場合や10秒経過後に両足を元の位置に戻せなかった場合は回数から減算した。座位足開閉テスト施行回数の群間の比較には、対応のないt-検定を用い、有意水準は5%未満とした。<BR><BR>【結果】転倒群は30名(男性6名、女性24名:平均年齢79.4±4.7歳)で、非転倒群は45名(男性6名、女性39名:平均年齢77.6±5.5歳)であった。座位足開閉テストの平均施行回数は、転倒群12.2±2.4回、非転倒群15.2±2.5回で、転倒群が非転倒群よりも施行回数が有意に減少していた。<BR><BR>【考察】座位足開閉テストは敏捷性を評価するために開発されたが、両足を左右対称かつ同時に開閉するため下肢の協調性や筋力なども関与する。これらの内的因子は加齢に伴い低下し、転倒リスクを増大させる一要因にも挙げられる。つまり、座位足開閉テストはこのような要素を反映し、非転倒群に比べより低下が著明であると予測される転倒群で施行回数の低下を認めたと推察する。臨床において、10秒間の座位足開閉テストで12回程度では転倒の起こりうる可能性が高くなると判断でき、高齢者の転倒予測に関する一指標として応用可能と考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1514-A1514, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544700160
  • NII論文ID
    130005015137
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a1514.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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