脳卒中片麻痺患者の背臥位リーチによる体幹機能評価の有用性

DOI
  • 近藤 淳
    社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院
  • 岡本 賢太郎
    社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院
  • 井上 宜充
    社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院
  • 久合田 浩幸
    社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院
  • 岡山 博信
    社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院

抄録

【目的】我々は脳卒中片麻痺患者の起き上がり能力に重要な体幹機能に関して、ベットサイドでも施行可能な背臥位で行なうことができる評価法として背臥位リーチを考案し、その有用性を検討した。<BR>【方法】対象は高次脳機能障害のない脳卒中片麻痺患者21例(男性20例、女性1例、平均年齢69.5±10.0歳)とした。背臥位リーチの開始肢位は背臥位にて両下肢伸展位とした。健側肘関節伸展位で第3指を上前腸骨棘と膝蓋骨上端を結んだ線上に置き始点とし、健側第3指を膝蓋骨上端に向かいリーチしその距離を測定。リーチ距離が始点~膝蓋骨上端距離の何%にあたるかを算出した(以下リーチ%とする)。リーチが膝蓋骨上端以上に達した場合は全てリーチ%を100%とした。測定にあたり下肢が床から離れないよう指示した。起き上がりは背臥位から健側を下にした側臥位を経て長座位となり3秒以上静止可能なものを起き上がり自立とした。起き上がり自立群と非自立群のリーチ%の有意差をMann-Whitney検定(p<0.05)で判定し、リーチ%とFIMとの相関をSpearman順位相関係数検定(p<0.05)で判定した。またリーチ%が50%未満群と50%以上群での起き上がり自立例の割合についても算出した。<BR>【結果】21例中、14例が起き上がり自立で、7例が非自立であった。起き上がり自立群のリーチ%の平均が50±27.5%、非自立群のリーチ%の平均が27±11.9%で有意に差が認められた。リーチ%が50%未満の例は14例で内8例(57.1%)が起き上がり自立であり、リーチ%が50%以上の例は7例で内6例(85.7%)が起き上がり自立であった。またリーチ%とFIM総得点(平均86.7±31.4点)の間に正の相関が認められた。<BR>【考察】今回の結果から背臥位でのリーチ距離が、起き上がり能力の獲得に重要な体幹機能を反映したものであると示唆された。重要な体幹機能とは腹直筋・両内外腹斜筋といった主要体幹屈筋力に加え体幹屈曲可動性や骨盤・下肢との協調性であると考えた。なぜなら主要体幹屈筋力と体幹屈曲可動性は上半身を抗重力方向へ移動する働きに必須であり、骨盤・下肢との協調性は起き上がりの要素である骨盤の前傾を行ないつつ、起き上がりの障害因子となる下肢の挙上を防ぐ働きがあるからである。<BR>また背臥位からの起き上がり動作によって初めて多くのADLが遂行可能となるため、起き上がり能力獲得と関連のあるリーチ%とFIM総得点との間に正の相関が認められたと考えた。<BR>背臥位でのリーチ距離の測定はベットサイドやプラットフォームで簡便に測定できる上、比率尺度で定量化できる再現性の高いものであり、リーチ%を約50%以上確保すれば85.7%起き上がり自立であるという結果は、臨床上有用な一つの指標になると考えた。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), B0101-B0101, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544755200
  • NII論文ID
    130005013653
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.b0101.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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