脳卒中片麻痺者のバランス能力と歩行自立度との関係

  • 久田 友昭
    沖縄リハビリテーションセンター病院リハビリ部
  • 真喜屋 奈美
    沖縄リハビリテーションセンター病院リハビリ部
  • 仲西 孝之
    沖縄リハビリテーションセンター病院リハビリ部

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Other Title
  • ノウソッチュウ ヘンマヒシャ ノ バランス ノウリョク ト ホコウ ジリツド トノ カンケイ

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Abstract

【目的】脳卒中片麻痺者の歩行能力に影響を与える因子の一つとしてバランス能力が挙げられる。臨床場面においてバランス能力を評価する方法としてFunctional Balance Scale(以下FBS)が用いられている。今回、脳卒中片麻痺者を歩行自立群と監視群に分け、FBSを用いて両群のバランス能力の違いを比較・検討する。さらにFBS項目の中でより歩行自立度に関連があると思われる動作を検証する。<BR><BR>【対象・方法】2005年4月から2006年6月の間に当院に入院していた独歩あるいは杖を使用して身体的介助なしで歩行可能な脳卒中片麻痺者49名(平均年齢:65.5±11.6歳、罹患期間:146.0±68.1日)とした。なお、測定に影響を与えるような高次脳機能障害がなく、重度の感覚障害や下肢に疼痛、整形外科的疾患を有するものは除外した。院内で歩行を実用的な移動手段として行っている者を自立群、リハビリ室において理学療法士の監視下で自立に向け歩行練習を行っている者を監視群とした。内訳は自立群:31名(平均年齢64.3±12.9歳/男22名、女9名)、監視群:18名(平均年齢67.7±88.8歳/男10名、女8名)両群にFBSを実施し、総合得点および項目毎の点数の差を比較・検討した。統計処理はMann-WhitneyのU検定を用いた(有位水準5%)。<BR><BR>【結果】FBSの総合得点について、両群間に有意な差を認めた。FBSの項目毎の比較では14項目中、移乗動作・閉脚立位・前方へのリーチ・振り向き動作・360°回転・段差踏み換え・継ぎ足での立位保持・片脚立位の8項目において両群間に有意差を認めた。<BR><BR>【考察】今回、独歩または杖使用にて身体的介助なしで歩行可能な脳卒中片麻痺者を対象に、歩行自立群・監視群間でバランス能力に差があるか検討した。その結果、FBS総合得点、14項目中8項目において有意差がみられた。有意差が認められた項目は、支持基底面の変化に対する姿勢保持や、支持基底面内での重心移動が要求される動作であると考える。丹羽らによる先行文献では、歩行自立度の改善は支持基底面での安定した重心移動の獲得により得られるとされている。このことから、今回の研究においても同様の結果が得られたと考える。<BR>また、FBSの項目毎の平均でみると自立群では片脚立位、監視群では、360°回転・段差踏み換え・継ぎ足での立位保持・片脚立位において他の項目より低い傾向にあった。このことから両群ともに低値を示した片脚立位は歩行自立度に関連が少なく、一方監視群のみで低値を示した3項目はより関連がある動作ではないかと考える。<BR><BR><BR>【まとめ】今回、脳卒中片麻痺者のバランス能力と歩行自立度との関連を検討し、若干の知見を得た。今後、バランス能力の要因である体幹機能や筋力等も含め、脳卒中片麻痺者の歩行自立度に関係のある因子について検討していきたい。

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