大腿骨頸部前捻角の違いが歩行時の膝関節運動に及ぼす影響

DOI
  • 湯田 健二
    海老名総合病院リハビリテーション科 神奈川県立保健福祉大学大学院
  • 石井 慎一郎
    神奈川県立保健福祉大学大学院

抄録

【目的】<BR>変形性股関節症に伴う変形性膝関節症(以下膝OA)、いわゆるcoxitis kneeの概念が1974年Smillieによって提唱されてから数多くの報告がされているが、明確な発生機序の報告はない.本国における変形性股関節症の原因の大多数が、臼蓋形成不全を基盤とする二次性の股関節症といわれているが、大腿骨にも特徴があるという報告が多数みられ、代表的な特徴として過度の大腿骨頸部前捻角(以下前捻角)があげられる.変形性股関節症の一要因といわれる前捻角の違いが、歩行立脚期における膝関節運動に及ぼす影響を調査することで、coxitis kneeの発生機序を探り、その予防的アプローチを検討することを目的とする.<BR>【対象・方法】<BR>対象は、本研究の主旨に同意の得られた整形外科疾患既往のない健常成人11名(男性6名、女性5名、26±6歳)とした.分析課題は定常歩行とし、三次元動作解析装置VICON(Vicon-peak社製)と床反力計(AMTI社製)を用いて計測した.得られたデータからVICONPlugInGaitにより膝関節の内・外反角度及び内・外反モーメントを算出し、立脚期を初期・中期・後期の3相に分け、各相における膝関節内・外反の関節角度及びモーメントを、前捻角の正常群と過度な前捻角群に分け比較検証した.前捻角の計測はCraigテストを用い、Tonnisらの報告による25°以上の前捻角保持者を過度前捻角群とした.内訳としては前捻角正常群7名(15.1±1.0°)、過度前捻角群4名(29.7±7.5°)であった.<BR>【結果】<BR>前捻角正常群の膝関節内・外反角度は、1名を除き立脚初期に内反、中期に外反、後期に内反方向への動きを示した.関節モーメントは全ての被験者において立脚初期に内反~外反、中期から後期にかけては外反を示した.過度前捻角群の膝関節内・外反角度は、立脚初期に外反、中期に内反、後期に外反方向への動きを示した.関節モーメントに関しては立脚初期に内反、中期に外反、後期に内反を示した.<BR>【考察】<BR>歩行時の大腿骨の動きは、立脚初期に内旋、中期に外旋、後期には外旋から急激な内旋方向への運動がみられると言われている.今回の前捻角正常群の膝関節内・外反運動はその大腿骨運動に準じた動きであると考えられ、膝関節において関節運動を制動及び誘導する方略が確認できたが、過度前捻角群においては、全ての被験者において前捻角正常群とは異なる方略がみられた.変形性股関節症患者のように過度な前捻角保持者の場合、膝関節の内・外反運動に対する制動及び誘導に破綻が生じている可能性が示唆され、coxitis kneeを予防するためには、歩行立脚期中の内・外反制動及び誘導を見極める必要があると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P2416-C3P2416, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544886912
  • NII論文ID
    130004580813
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p2416.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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