身体傾斜角度認知に対するTENSの影響
抄録
【はじめに】抗重力位での立位保持では、身体の空間における垂直認知が重要視されている。垂直認知は視覚的垂直認知と閉眼において垂直を定位する身体的垂直認知(以下SPV)がある。片麻痺例ではSVVが麻痺側に偏倚していると報告されている。一方Perennouら(2001)は経皮的末梢神経電気刺激(以下TENS)によって、片麻痺例の不良姿勢が改善されたと報告している。しかし、この実験では視覚情報の影響もあり、SPVに対してTENSがどの程度の影響を与えたのかは不明である。さらに、SPVの測定実験では特殊な実験装置が使われている。そこで、本研究の目的は起立訓練器を用いたより臨床的な方法で、TENSが身体的垂直認知に与える影響を明確にすることである。<BR>【方法】1.対象:対象は研究の趣旨を理解し、書面にて参加の同意を得た健常成人18名(男性9名)とした。平均年齢は21.8歳、平均身長は164.4cm、平均体重は58.5kg、利き手は全例右利きであった。2.身体傾斜角度認知課題:実験は起立訓練器(ミナト社製)上で側臥位(左右はランダムに設定した)となり、アイマスクをし、骨盤下肢を固定し、足底接地とした。本来SPVの測定では目標角度を90度とするべきであるが、健常人では容易な課題となるので50度を目標角度とした。被検者が50度となったと感じる角度まで起立訓練器を傾けた。4回試行を行い、各試行間に30秒の休憩を入れた。開始角度は試行ごとにランダムに設定した。起立訓練器の角速度は1.6 度/秒であった。3.電気刺激の方法:胸鎖乳突筋の後側方に約2cm離して電極を貼り、頻度:100Hz、刺激間隔:200μs、強度:10mAとした。その後、3分間電流を流し実験を行った。以下、身体傾斜角度認知課題と同様に行った。実験順はランダムに設定した。また、側臥位となった際に起立訓練器と接触している側を下側とし、接触していない側を上側とした。4.統計処理:刺激なし条件と電気刺激条件の比較は、対応のあるt 検定を用いた。有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】全ての刺激条件において、刺激なし条件よりも大きな値となった。特に刺激なし条件では50.2度に対して、下方刺激条件では54.0度と有意差が認められた(p<0.01)。<BR>【考察】刺激なし条件で目標角度との差は0.2度であり、極めて正確であったと考えられる。しかし、下方刺激条件の平均角度は54.0度であり、目標角度との差は大きかった。これは、起立訓練器との身体接触とTENSによって体性感覚入力が増加したためであると考えられる。また、TENSによる神経調節の正確な生理学的メカニズムは明確に解明されていないが、頚神経叢には神経線維が密集して存在しているため、TENSが求心性の神経線維を活性化させ、身体座標に対して影響を及ぼしたと考えられた。今後は実際の症例を通しての検討が必要である。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), F0621-F0621, 2008
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680544948864
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- NII論文ID
- 130005016240
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可