骨盤傾斜による脚長差の評価

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説明

【目的】<BR> 一般的に変形性股関節症患者は、股関節の変形や逃避姿勢のため脚長差を生じることがある。<BR> 変形性股関節症による疼痛のため、長年股関節外転位での荷重を行っており、股関節内転制限を生じ、反対側骨盤が挙上した見た目の脚長差を生じ、歩容にも影響を与えたと考えられる症例を経験した。臨床上このように棘果長や転子果長には左右差を認めないが、臍果長に左右差を生じる症例を目にする。<BR> このような症例の脚長差を測定する際、膝関節の屈曲拘縮や股関節の回旋角度などのため正確な検査が困難な場合が多い印象を受ける。そこで我々はこのようなケースに対し、臍から上前腸骨棘までの直線距離(以下:臍棘長とする)を測定することでより簡便に骨盤傾斜の指標をとることができるのではないかと考え、臍果長と臍棘長の関係を明らかにすることを目的として本研究を行った。<BR>【方法】<BR> 下肢・脊柱に重篤な既往のない健常成人とし、本研究の趣旨を十分に説明し、同意が得られた成人22名(男性11名、女性11名)とした。平均年齢26.2±3.7歳、平均身長166.81±7.63cm、平均体重61.49±11.65kg、であった。また事前に測定した棘果長において0.5cm以上の脚長差を持つ者は対象から除外した。<BR>【結果】<BR> 測定肢位はベッド上背臥位にて右骨盤を自動運動にて最大に挙上させた肢位を保持させた肢位とした。下肢長の測定は臍~上前腸骨棘(臍棘長)、上前腸骨棘~内果下端(棘果長)、大転子~外果下端(転子果長)、臍~内果下端(臍果長)の4項目をメジャーにて両側測定し、それぞれ左下肢長から右下肢長をひいた値を左右差とした。この他、骨盤挙上位での左股関節の外転角度をゴニオメーターにて測定した。また統計学的処理にはt検定にて各脚長差を解析し、ピアソンの相関係数を用い、臍棘長と各下肢長、臍果長と股関節外転角度における相関を解析した。危険率はいずれも5%未満とした。<BR>【考察】<BR> 各下肢長の左右差の平均は臍棘長1.3cm、棘果長-1.06cm、転子果長-0.55cm、臍果長2.43cmであった。左股関節外転角度の平均は11°であった。<BR> 各脚長差は、臍棘長p<0.01、棘果長p<0.01、臍果長p<0.01と3つにおいて有意差を認めた。<BR> 臍棘長と臍果長においてr=0.44、臍果長と股関節外転角度においてr=0.47で正の相関がみられ、臍棘長と棘果長においてr<0.01、臍棘長と転子果長においてr=0.22で相関がみられなかった。<BR> 詳細は本学会にて報告する。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A1260-A1260, 2007

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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