小脳腫瘍に対して開頭腫瘍摘出術を施行した小児症例に対する理学療法
説明
【はじめに】小児領域での脳腫瘍(以下BT)に対する理学療法(以下PT)についての報告は少ない。今回小脳腫瘍に対し開頭腫瘍摘出術を施行した3症例に対してPTを経験する機会を得たので考察を加え報告する。<BR>【症例提示】症例は小脳の開頭腫瘍摘出術施行後の症例で病巣摘出部位は、症例1:小脳髄帆、虫部(4歳10ヶ月男児)。症例2:小脳虫部亜全摘(2歳6ヶ月男児)。症例3:右上小脳脚から右小脳半球亜全摘(2歳4ヶ月男児)。<BR>【訓練開始時の症状・経過】3症例とも術後体幹と四肢近位部の筋緊張の低下と協調性低下、企図振戦、測定障害を認め、その後軽減したが、下部体幹、下肢の協調した運動の低下は持続して見られた。また小脳症状の変化に伴いADLレベルが変化した。<BR>症例1:術前評価にて、共通の症状の他に、軽度な右痙性片麻痺が見られた。術後5日目より訓練開始、右片麻痺、失調症状に変化なく、ADLは自立座位レベル。訓練開始2日目より坐位にて動的な体幹の伸展運動可能となり、訓練3日目より上肢失調症状軽減し始め、立位保持可能となる。訓練16日目に屋内独歩監視レベルにて自宅退院となる。<BR>症例2:術後9日目より訓練開始、共通の症状の他に、軽度の左痙性片麻痺を認め、ADLは介助座位レベル。訓練開始19日目には四つ這い可能となった。訓練23日目上肢の企図振戦、測定障害は軽減し、つかまり立ち監視レベルとなったが、下部体幹の低緊張は持続し歩行が困難であった。訓練30日目に自立坐位レベルにて自宅退院となった。<BR>症例3:術後7日目より訓練開始。共通の症状の他に手指の巧緻性の低下、左痙性片麻痺を認め、ADLは臥位レベル。訓練開始5~7日目より介助坐位にて頭部、体幹伸展運動可能となり、訓練13日目より坐位保持可能となったが、坐位では右上肢の企図振戦、体幹失調がみられた。訓練18日目より右上肢企図振戦、体幹失調軽減し、訓練21日目に立位保持可能となる。訓練30日目に屋内歩行介助レベルにて自宅退院となった。<BR>【訓練対応】症例1、2:PTでは立位中心に体幹筋の緊張を高め、動的なバランス課題を用いて、活動性と協調運動を促した。症例3:麻痺側の痙性を抑制しつつ、坐位、立位にて体幹の活性化、静的バランス課題、上肢の協調運動を促した。また3症例共に母親に訓練に全てに同席して頂き、目標を共有し、体幹の活性化を中心とした運動を適時指導し施行して頂いた。<BR>【考察】今回全症例に行なった体幹四肢近位部を中心としたPTが、体幹の筋緊張の高まりにつながり、上肢失調症状の軽減とADLレベルの改善に影響したと考える。またPT介入と共に、母親への指導も、日中の活動性の向上につながり、訓練効果に影響を与えたと考える。BTの疾患特性から、当院では早期の自宅退院を目標としており、母親指導を含めた早期のPTが必要であると考えた。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), B0670-B0670, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680545040000
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- NII論文ID
- 130005015250
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可