高齢者の前傾姿勢の改善と脊柱アライメントの変化
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説明
【目的】我々は脊柱の後彎変形により前傾姿勢を呈した高齢者に対し、姿勢を修正すべく運動療法を実施している。第41回の本学会において体幹伸展エクササイズにより前傾姿勢が改善することを報告した。今回は前傾姿勢が改善した高齢者において脊柱アライメントにいかなる変化があったかを検証した。【方法】対象は、65歳以上の高齢者10名(男性2名、女性8名)で、平均年齢は80.9±5.2歳であった。脊柱の後彎変形の原因となった疾患として脊柱圧迫骨折によるものが8名、変形性脊椎症が2名であった。すべての対象に週2回の頻度で3ヶ月間運動療法を実施した。筋力増強エクササイズとして腹臥位での上体反らし運動と背臥位にて行う片脚ブリッジ運動をそれぞれ3秒間の最大挙上位の保持を10回ずつ実施した。また脊柱の可動域を向上させるエクササイズとして腹臥位でのOn hands push upによる上体反らし運動を実施した。脊柱アライメントの測定はSpinal Mouse (Idiag AG,Switzerland)を用いて、安静立位でC7からS3までを測定した。脊柱の彎曲角度はC7/Th1間からL5/S1間までの椎体間角度の和を脊柱彎曲角度とした。前傾姿勢の指標としてTh1とS1を結ぶ線と床からの垂線がなす角度を全体傾斜角とした。また、骨盤の傾斜角度を表す仙骨傾斜角をS1からS3を結ぶ線と床からの垂線がなす角度とした。エクササイズ前後の比較はWilcoxon順位符号検定を用いた。それぞれの角度の相関はエクササイズ前後の角度変化を算出しPearsonの相関係数を用いて検定した。また後彎変形部位より上位の脊柱彎曲角度と下位の脊柱彎曲角度の角度変化の違いを検証した。【結果】3ヶ月のエクササイズで脊柱彎曲角度は5.33±5.79°、全体傾斜角は2.60±4.23°それぞれ伸展方向へ変化した(p<0.05)。仙骨傾斜角は1.86±4.88°伸展方向へ変化したが有意差は認めなかった。それぞれの角度の相関は全体傾斜角の角度変化と仙骨傾斜角度の角度変化のみに有意な正の相関を認めた(r=0.764、p<0.05)。2名は仙骨傾斜角が伸展方向へ変化しなかったが、脊椎彎曲角度は12.0±0°と大きく伸展方向へ変化していた。後彎変形部位がTh11より上位の場合は、変形部位より下位が上位とくらべ大きく伸展方向へ変化し、後弯変形部位がTh12以下は変形部位より上位が下位より大きく伸展方向へ変化していた。【考察】運動療法により高齢者の前傾姿勢が改善され運動療法の効果を再確認することができた。前傾姿勢の改善には仙骨傾斜角の角度変化が影響を及ぼすが、脊柱の角度変化によっても前傾姿勢は変化すると示唆された。また後彎変形部位より脊柱の角度変化する部位が異なりエクササイズを行うための参考になると考えられる。【まとめ】高齢者の前傾姿勢の改善は仙骨傾斜角と脊柱彎曲角の変化が重要であった。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), A0704-A0704, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680545114112
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- NII論文ID
- 110006374443
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可