立ち上がる動作の特徴

DOI
  • 萩原 礼紀
    日本大学大学院生産工学研究科管理工学専攻 日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 久保 達郎
    群馬大学大学院医学系研究科保健学専攻 介護老人保健施設かみかわ
  • 唐牛 大吾
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科

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抄録

【目的】<BR>我々が身体の動きとして捉えている運動系は、関節、筋群、運動単位、運動ニューロンなどの異なる階層からなっており、それぞれの時間的・空間的活動の結果が動作として観察されている。したがって映像解析や表面筋電計の同期だけでは十分見出せない動作上の特徴も存在する。またこれらの複層的に絡み合った観測データは時系列データとしての取り扱いが必要であり、解析手法も注意が必要である。今回修正型最大エントロピー法(Maximum Entropy Caluculation: Memcalc)を使ったスペクトル分析法(Spectru Analysis)を用いて分析したところ、動作加速度の評価として定量化され再現性のある結果を得ることが出来た。<BR>【方法】<BR>身体機能、健康状態に問題がないと判断された健康成人34名。平均年齢24.6±5.3歳。実施者には本研究の意義と目的、方法、予想される利益と不利益などについて十分な説明を行い書面にて同意を得た。<BR>3次元加速度計(Activtracer AC301:ACT,GMS社)を使用し、「椅子からの立ち上がり動作」を遂行している際の身体の加速度を測定した。5回実施し平均値を採用した。課題動作各5回の平均値データのパワースペクトルを計算し、各区分のスペクトルによって分類した。各項目の統計学的検定には、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い、有意水準を5%以下とした。統計解析ソフトはSPSS for windows 10.0Jを用いた。各測定値はmean±standard deviation(以下、mean±SD)で表した。<BR>【結果】<BR>1動作における平均合成加速度は5.2Gで、3軸それぞれの加速度は前後1.14G、左右1.6G、上下2.5Gであった。1動作中の加速度成分は上下方向が単独で総体比48%。前後方向の加速度は総体比21%。左右方向は総体比31%であった。スペクトルの形状はべきスペクトルを示した。上下方向加速度の計算された傾きは-3.7で、3つの系の違いが解析された。上下方向加速度の動作波形は余弦函数波、または三角パルス波として理解できた (第ゼロ近似として)。 <BR>【考察】<BR>通常生体から得られる時系列データは指数特性を示すものが多いが、本データではべき特性を示した。観測されたデータの持つ特徴として1周期を含む帯域制限された「振幅が方形波で変調された余弦波」または「三角波パルス」がある。このデータのべきスペクトルの傾き(理論値)は-4.0である。計算された課題動作のべきスペクトル-3.7はこの理論値に0近似しており、この波形は、時系列上に突然現れる波形の特徴といっても過言ではない。指数特性ではなく、べき特性を示したことからも課題動作が機械的な動作特性を包含すると推察された。<BR>【まとめ】<BR>解析結果より3つの系として理解された椅子から立ち上がる動作は、これまで考えられてきたような段階的推移を経る分節的な動作ではなく、瞬時に動作成立要因の大勢を発生する動作であることが示唆された。<BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0705-A0705, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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