足底腱膜炎の病態に関する臨床解剖学的研究

  • 工藤 慎太郎
    国際医学技術専門学校 理学療法学科 愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 颯田 季央
    宮本整形外科クリニック リハビリテーション科
  • 小松 真一
    愛知医科大学医学部解剖学講座 三好町民病院 リハビリテーション科
  • 坂崎 友香
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 太田 慶一
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 浅本 憲
    愛知医科大学医学部解剖学講座
  • 中野 隆
    愛知医科大学医学部解剖学講座

Bibliographic Information

Other Title
  • ―足底腱膜付着部の形態と機能に注目して―

Description

【はじめに】<BR>足底腱膜炎の治療法として,安静保持,足底腱膜(PA)のストレッチ,足底挿板の使用などが挙げられている.しかし,これらの治療で症状の消失に至らない症例も数多く経験する.今回,PAの踵骨付着部(腱膜付着部)の形態を観察し,その機能および足底腱膜炎の病態について考察したので報告する.<BR>【方法】<BR>愛知医科大学医学部において『解剖セミナー』に供された実習用遺体14体25足を対象とした.足底を剥皮後,皮下組織を除去してPAを剖出した.腱膜付着部を温存したままPAを足部から切離し,PAの背側面に付着している筋や結合組織を除去し,腱線維束の走向を肉眼的に観察した.また,13例において,腱膜付着部は脱灰してパラフィン包埋後,腱線維方向の薄切切片(6μm)を作成し,HE+alcian blue,Masson’s trichrome,Toluidine blue染色を行って組織学的に観察した.なお,解剖の実施にあたっては,愛知科大学医学部解剖学講座教授の指導の下に行った.<BR>【結果】<BR>PAの腱線維束の走向は,成書に記されている足部長軸に沿う縦走線維束に加えて,その背側を斜走する線維束(斜走線維束)が見られる例があった.斜走線維束の有無により,type1:斜走線維束を有する例(19例),type2:斜走線維束を有さない例(6例)に分類した.さらにtype1は,type1-a:内側から外側へ斜走する線維束のみを認める例(10例)と,type1-b:内側から外側へ斜走する線維束に加えて,外側から内側へ斜走する線維束も認める例(9例)に分類した.腱膜付着部は,組織学的に線維層-非石灰化線維軟骨層-石灰化線維軟骨層-骨層の順に配列された4層構造を呈していた.<BR>【考察】<BR>熊井らは,足底腱膜炎の病態は線維軟骨を含んだ腱膜付着部の変性であると報告している.本研究においても,腱膜付着部は線維軟骨を含む4層構造を呈していた.このような構造は,腱からの張力が直接加わる部位に存在し,張力を緩衝する機能を有すると考えられている.すなわち腱膜付着部は,PAからの“張力を緩衝する機能”を有していることが示唆される.一方,解剖学的には,斜走線維束を有するtype1が多かった.腱線維の走向は加わった張力の影響を受ける.そのため,縦走線維束の走向はPAの張力が足部長軸に沿って伝達された結果であり,斜走線維束の走向は荷重時に踵骨に加わる応力を分散した結果と考えられる.つまり,腱膜付着部は“荷重応力を分散する機能”も有していることが示唆される.これらの形態と機能から,PAの緊張が亢進すると,腱膜付着部への張力が増強し,腱膜付着部の変性が生じると推察される.またPAの緊張が減弱すると,荷重を分散することが出来ず,腱膜付着部への荷重応力が上昇し,腱膜付着部の変性が生じると推察される.すなわち,足底腱膜炎の病態は,PAの緊張状態から2つに大別でき,異なる治療が必要になる可能性が考えられる.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680545139968
  • NII Article ID
    130004580771
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p2372.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top