外反母趾矯正靴下の使用による高齢者の身体変化

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【目的】外反母趾は年齢と共に徐々に増加し、高齢者では重症例が多い(田中ら2008).さらに、外反母趾角が30°をこえると観血的治療の適応となることもある(寺原ら2006).高齢者では外反母趾により足部の機能が低下し、重心動揺に影響を与え転倒や歩行障害を起こす要因のひとつとされている(酒向ら2007).本研究は、高齢者に対して市販靴下と矯正靴下着用による足圧中心前方移動距離とFunctional Reach Test距離(FRT)の比較を行い、外反母趾角と各測定項目の関係を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】本研究の趣旨を十分に説明し賛同の得られた60歳以上の女性50名を対象とした.外反母趾による愁訴の有無は問わなかった.測定項目は、第1趾側角(外反母趾角)、足圧中心前方移動距離、FRTとした.外反母趾角は裸足と市販靴下、矯正靴下の3条件で測定し、その他の項目は市販靴下、矯正靴下の2条件で測定を行った.外反母趾角の計測は内田ら(2002)の方法を参考に、第1中足骨と基節骨外側縁からなる角度を計測した.足圧中心前方移動距離は、足圧分布測定装置(Zebris社)上で静止立位を10秒保持後、前方への最大荷重を行い、画面上での踵から最大前方移動点までを計測した.測定は3回実施しその平均値を用い、さらに足長で除した値を使用した.FRTはファンクショナルリーチ測定器(OG技研社)を用いて測定した.なお、本研究で使用した外反母趾矯正靴下は広島大学と(株)コーポレーションパールスターが共同開発したものを使用した(特願2008-111012号).統計学的分析は裸足、市販靴下および矯正靴下の3条件間の外反母趾角に対し一元配置分散分析を用いて比較した.また、裸足の外反母趾角と矯正靴下着用後の外反母趾角の相関関係をpearsonの相関係数を用いて比較した.それぞれ危険率5%未満を有意とした.本研究は当院倫理審査委員会の承認を得て行った.【結果】外反母趾角は裸足、市販靴下と比較し、矯正靴下で有意に小さい値となった(p<0.05).また市販靴下と比較し、矯正靴下で足圧中心前方移動距離、FRTともに延長が認められた(p<0.05).裸足の外反母趾角と矯正靴下着用後の外反母趾角の間に有意な正の相関が認められた(p<0.05).【考察とまとめ】矯正靴下によって外反母趾角、足圧中心前方移動距離およびFRTに改善が示された.さらに裸足での外反母趾角が大きいほど矯正靴下の効果が高くなったことから、高齢者に対する靴下の有効性が明らかとなった.また、矯正靴下着用によって足圧中心前方移動距離が延長したことで重心の前方移動を円滑に行えるようになり、FRTを延長させる要因にもなったと考える.今後は実際に外反母趾の症状のある症例に対して長期的な治療効果を観察したい.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680545254528
  • NII Article ID
    130004580742
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p1480.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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