前十字靱帯再建術施行前後おける膝伸展運動中の脛骨前方移動量と主観的症状の関係について

説明

【目的】<BR>前十字靭帯(以下ACL)損傷例に対して、主観的な症状の改善と運動レベルの向上のためACL再建術が行われるが、膝関節の安定性の指標である脛骨前方移動量の測定は、膝関節を固定して行われることが多い.本来なら動作施行中に測定を行う方が良いのではないかと考え、本研究ではCA4000を用いて膝伸展運動中の脛骨前方移動量を測定し、主観的症状や運動レベルとの関連を検討した.<BR>【方法】<BR>ACL損傷者20名をACL損傷群とし、ACL再建術施行後約12か月に再測定できた9名をACL再建群とした.測定前に所属機関で倫理的な承認を得、対象者は医師から測定に関する説明を受け全員が同意した.測定にはCA4000を用い、他動膝伸展、自動膝伸展、スクワットの各動作施行中の脛骨粗面の位置と膝関節角度を測定した.自動膝伸展運動時(以下AEATT)及びスクワット時(以下SQATT)の脛骨粗面の位置が他動膝伸展運動時の位置からどれだけ変動したかを算出し、損傷膝非損傷膝間及び再建術施行前後間で比較した.また、事前にTegnerスコアとLyshoulmスコアを調査した.<BR>【結果】<BR>AEATTは損傷膝群が非損傷膝群よりも0°~20°の角度で有意に大きかった(P<0.05).SQATTは損傷膝群が非損傷膝群よりも30°~60°の角度で有意に小さかった(P<0.05).ACL再建術施行前後の比較では、AEATT、SQATTのどちらも有意差はなかった.Lysholmスコア、Tegnerスコアはともに再建後の方が再建前より有意に改善した.<BR>【考察とまとめ】<BR>本研究からOpen Kinetic chain下での抗重力膝伸展運動時には大腿四頭筋の収縮によって頸骨が前方に引き出され、その移動量はACL損傷膝では増大することが分かった.このような結果はこれまで行われてきた静的な条件下での報告と同様の傾向を示している.<BR>スクワットで脛骨前方移動量が非損傷膝よりも小さかったのは、ハムストリングスの強い収縮による頸骨の後方引き出し力が、大腿四頭筋による前方引き出し力に勝ったためと考えられる.ハムストリングスの働きによるスクワット動作の安全性を述べている先行研究もあり、同様の結果であったといえる.膝関節の不安定感による防御的な反応や代償動作によりハムストリングスの強い収縮が生じると考えられる.<BR>ACL再建術施行前後の比較では、AEATT、SQATTともに有意差が見られなかったが、LysholmスコアもTegnerスコアもともに有意に改善していた.ACL損傷者の固有感覚受容器の機能低下を指摘する報告は多いが、本研究からも自覚症状の改善や動作能力の向上には、ACL再建術施行とともにその後のトレーニングで固有感覚受容器の機能を高め、動作の質を高めることが重要ではないかと考えられた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P1484-C3P1484, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680545262592
  • NII論文ID
    130004580746
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p1484.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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