両脚立位から片脚立位に至るまでの体幹側屈と支持側内転筋の関連性

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抄録

【はじめに】脳卒中片麻痺患者において健側を支持側とした片脚立位獲得は難しい事が多い.その際には股関節内転筋群(以下,内転筋)の萎縮を伴っている事が多く,片脚立位獲得には内転筋が強く関わっているのではないかと考えた.星は高齢者群と青年群では片脚立位を取るパターンが異なり,高齢者群では支持側への体幹側屈を用いて重心移動を行っていると述べている.そこで本研究では,片足立位に移行するまでの体幹側屈と支持側内転筋活動の関連性を検討することを目的とした.<BR>【方法】対象は健常成人男性15名(平均年齢20.8±0.8歳,平均身長172.7±4.0cm,平均体重65.4±7.3kg)とした.研究内容は事前に説明を行い,承諾を得た。測定課題は、両脚立位から右片脚立位になることとした。開始肢位は床反力計の上で頭位を正しく保ち固視点を注視させ,両上肢を胸の前で組ませ,両側上前腸骨棘と膝蓋骨中央が床からの垂直線上を通るようにして股関節内外転中間位の立位姿勢とした.試行動作は,検者の口頭指示で,左脚の股関節を約45°屈曲し,下腿を下垂した右片脚立位となり,3秒間保持した後終了とした.この動作を3回試行した.赤外線反射マーカーを両側の肩峰,大転子,大腿骨外側上顆,腓骨外果,第5中足骨頭に貼付し,三次元動作解析システム(Vicon370)を用いて記録した.床反力計(KISTLER)の上で両脚立位を保持してもらい,動作中の足圧中心(Center of pressure: COP)を記録した.筋電図は筋電計(サイナアクト)を用いて,両中殿筋,両内転筋,右内側広筋を導出した.COP速度より、運動時間を左方加速期,左方減速期,右方加速期,右方減速期の4相に分けた。<BR>【結果と考察】被験者15名に対し,運動初期の体幹の右側屈の有無でA群とB群に分けた.B群では一度右側屈を行った後に左側屈を行い,片脚立位に至っていることが分かった.また,A群では右方加速期に支持側内転筋の活動変化がみられた。しかし、B群では右方加速期に支持側内転筋の活動変化は見られなかった.これは体幹側屈することでHATの質量中心点を移動させ,支持側へ重心を移動しているためと考えられる。しかし、体幹右側屈角度のピークと右方加速期が必ずしも一致しないことや,側屈角度が1°程度であることから体幹側屈で支持側へ重心移動を行っているとは考えづらい.そこで,今回の結果から支持側内転筋活動と体幹側屈は支持側への重心移動に関与しているのではなく,姿勢制御に関与していると考える.片脚立位に移行する際,挙上側下肢で床を蹴る。この時、床反力によって支持側股関節を回転軸としたモーメントが生じる.この床反力のモーメントに対して,A群では支持側内転筋の活動によって股関節の外転を制動することで姿勢制御を行うと考える.さらに体幹右側屈パターンをとるB群では,右から左への体幹側屈運動によって,床反力によるモーメントと反対方向の力を生んで姿勢制御を行うと考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0025-A0025, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680545281536
  • NII論文ID
    130005014661
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a0025.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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