野球肘症例の投球動作における肘伸展運動と前腕回内運動について

  • 神原 雅典
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 嘉陽 拓
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 千葉 慎一
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 大野 範夫
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部

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  • トップポジション及びボールリリースにおいて

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【目的】投球動作において、肘関節の伸展運動と前腕回内運動は主動作であり、肘外反ストレスを減少させると報告されている。今回,実際の投球動作におけるトップポジション(以下 TP)及びボールリリース(以下BR)時の肘屈伸運動ならびに前腕回内外運動について調査し、興味ある知見が得られたのでここに報告する。<BR>【方法】対象は、野球経験者4名(平均年齢30歳、22歳~38歳)であり、全員右投げであった。4名中2名(A、B)は投球動作時に肘に愁訴を有し、他2名(C、D)は無愁訴であった。方法は、対象者に実際に投球動作を行わせ、それを高速カメラ4台(80Hz)で撮影し、TPからBRまでの投球動作を3次元動作解析システム Frame DIAS2(DKH社製)に取り込み解析を行った。調査項目は、1.肘中点(上腕骨内外顆の中点)と肩峰との結線と、肘中点と前腕中点(尺骨及び橈骨の茎状突起の中点)の結線とがなす角度(以下、肘伸展角度。※肘伸展0度を180度と表現する。)2.上腕骨内外顆の結線と尺骨及び橈骨の茎状突起の結線とがなす角度(以下、前腕回内外角度。※正の値を回外位とする。)とした。なお、個々の対象の回内外中間位は事前に解析した。<BR>【結果】1.肘伸展角度について。TPではA:40.1度、B:40.2度、C:100.0度、D:72.4度であり、BRではA:99.8度、B:133.0度、C:126.5度、D:155.3度であった。2.前腕回内外角度について。TPではA:-1.4度、B:45.4度、C:39.5度、D:47.1度であり、BRではA:23.0度、B:15.7度、C:3.6度、D:1.0度であった。<BR>【考察】4名の中で最も肘伸展が少ないAは愁訴を有し、最も伸展しているDは無愁訴であり、今までの報告と同様の傾向が見られた。しかしながら,4名の中で肘の伸展角度が近似しているBとCでは愁訴の有無に違いが見られた。この2名の相違点としてはBRでの前腕回内外運動が挙げられ、愁訴を有する者はより回外位を示し、無愁訴の者はより回内外中間位付近に近い値であった。そこで、前腕回内外運動に着目すると、愁訴を有する2名はBRでは回外位、無愁訴の2名はほぼ回内外中間位であった。投球動作において、肘の伸展運動が乏しい者は、肩関節内旋による代償が大きくなり、肘外反ストレスを増大させている恐れがあり、それを軽減させるためには肘の伸展が重要であるとされてきた。しかし、今回肘の伸展角度が近似していても愁訴を有する者と無愁訴の者に分かれたことから、BRにおいて肘伸展運動は重要であるがそれに加えて前腕回内外中間位を保持できることが重要であることが示唆された。今後は対象を増やしたうえで検討を重ねていきたい。

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