小零細工場の集約化事業についての検討と評価 : 住工混合地域の研究 (その 3)

DOI Web Site Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • A CONSIDERATION OF THE EFFECTS ON THE WORKS OF BUILDINGS GATHERED SMALL-SCALED FACTORIES : Study on housing and industrial mixed land use areas (No.3)
  • 住工混合地域の研究-3-小零細工場の集約化事業についての検討と評価
  • ジュウコウ コンゴウ チイキ ノ ケンキュウ 3 ショウ レイサイ コウジョウ

この論文をさがす

説明

本論文では, 小零細工場の集約化事業について批判的に検討, 評価を行ってきたが, 要約的にまとめると以下のようになる。現在までの公的集約化事業を物的な側面からみれば, 建築物の不燃化, 公害防止施設の共同設置等によって公害, 労働環境等の空間条件が改善された点は評価できる。しかし, 集約化において常に言われる工場間の協力, 共同化といったソフトな面については, 共同施設事業を義務づけられている中小企業振興事業団の事業でも生産周辺条件の共同化に比べ, 個別経営の利益とかかわる生産条件での共同化はむずかしく, 加えて人間関係, 組合運営, 資金条件等様々な問題が出されており, 安易に共同化を考えることはできない。混合地域の整備という横のつながりの場合はなおさらであり, 物的施設としての建物の集約化と生産にかかわる協力, 共同化の問題は切り離して考える必要があるだろう。また, 現行の共同工場建設の目的が, 生産面での共同化, 協業化を図り, 規模拡大によって企業の体質を改善するという産業政策, 商工行政的側面に重点があるため, 住工混合地域の環境整備といった都市計画, 地区整備的側面, 混合地域に多い生業的経営を主とする小零細工場の営業, 生活の改善といった生活問題的, または社会福祉的側面が欠落していることが指摘できる。都市計画, 地区整備の側面からいえば, 工場集約化事業が, 住工混合地域の整備計画の中に位置づけられる必要がある。典型自治体の取り組みでみた神戸市における集積地域内での集約化事業は, そうした方向での数少ない努力の例であるが, こうした現行制度の運用による努力だけでは限界があり, 今後は集約化事業のタイプでもふれたように地区整備型の事業が必要とされる。しかしながら, 逆に混合地域の整備計画における工場対策の中での集約化事業の位置という点からみると, それは限定された一つの整備手法以上のものではないだろう。大都市に広範に存在する住工混合地域の工場対策を考えると, 個別工場の公害防止を重視しつつ, きめ細かい土地利用の規制, 誘導といったソフトな対策がまず問題とされ, その中で公害防止の困難な工場や街区の密集等で集団的に解決せねばならない場合等にはじめて工場集約化の対象とされるだろう。社会福祉的, 生活問題的側面からは, 現在までの公的集約化事業が中小企業でも比較的上位のものに限られていることから, 少なくとも負担条件の軽い公的賃貸工場アパート等を含む規模階層に応じた多様な供給方式が必要であろう。さらには, 小零細層の場合, 集約化に伴う経営者の住宅問題も重要であるが, この点については次報の住宅併設の集約化事業において検討する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ