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独居高齢者の在宅生活継続に重要な生活機能
Description
【はじめに、目的】高齢社会白書によると平成23年10月の我が国の高齢者人口は、過去最高の2,975万人となり総人口に占める割合も23.3%となった。今後、要介護認定を受けた高齢者の数も年々増加していくことが予測されている。また、同居や隣居を志向する高齢者の割合が減少してきており、今後は要介護高齢者の独居世帯、あるいは高齢者夫婦のみの世帯が増加すると予測されている。理学療法士にとって、このような高齢者が居宅生活を継続していけるよう支援をしていくことは重要な責務であり、地域に居住する高齢者の世帯形態に着目し、これらの日常生活動作能力(以下ADL)や生活状況を明らかにする必要がある。赤嶺らは、世帯構成別のADLの違いを調査した結果、世帯間でADLに有意差は認められなかったと報告している。しかし、この調査は介護保険施行前に実施されており、要介護高齢者を対象とした研究は見当たらない。そこで本研究では、要介護高齢者を対象として独居世帯と同居世帯のADLを比較し、独居生活を継続していくために重要な生活機能を検討することとした。【方法】対象は、通所介護サービスを利用している要介護高齢者7821名(男性2326名、女性5495名、年齢83.22±6.97歳)であり、同居人の有無により独居群2081名(男性490名、女性1591名、年齢82.89±6.93歳)、同居群5740名(男性1836名、女性3904名、年齢83.74±7.00歳)に分類した。調査項目は、年齢、性別、要介護度に加え生活機能の評価としてFunctional Independence Measure(FIM)を測定し、セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動、コミュニケーション、社会的認知の大項目にカテゴリー化した。統計学的解析は、各項目における独居群と同居群との差を検討するために対応のないt検定(年齢)、Mann-WhitneyのU検定(要介護度、FIM大項目)、χ²検定(性別)を用いて比較した。加えて、従属変数を世帯(同居群:0、独居群:1としてダミー変数化)、独立変数を年齢、性別(男性:1、女性:2)、要介護度、セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動、コミュニケーション、社会的認知とした多重ロジスティック回帰分析を行い、各独立変数のオッズ比を求めた。有意水準は5%未満 とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に沿って本研究の主旨および目的の説明を行い、同意を得た。なお本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。【結果】単変量解析より、年齢と要介護度は同居群に比べ独居群で有意に低く、FIM大項目はコミュニケーション以外の項目おいて独居群が有意に高い値を示した。コミュニケーション項目に関しては独居群の方が有意に低値を示した。男女比は、同居群に比べ独居群で有意に女性が多かった。多重ロジスティック回帰分析より、独居世帯に影響を及ぼす因子として、年齢、性別、要介護度、セルフケア、移動、コミュニケーション、社会的認知項目が抽出された。各項目のオッズ比は年齢が0.95(95%Confidence Interval (CI):0.94-0.96)、性別が1.64(95%CI:1.45-1.86)、要介護度が0.61(95%CI:0.54-0.69)、セルフケアが1.02 (95%CI:1.00-1.04)、移動合計点が1.04(95%CI:1.00-1.07)、コミュニケーションが0.94(95%CI:0.91-0.99)、社会的認知が1.03(95%CI:1.01-1.06 )を示した。【考察】世帯構成に影響を及ぼすADL項目として抽出されたのは, セルフケア、移動、コミュニケーション、社会的認知であった。独居高齢者の居宅生活継続に対する支援として、これらの項目に対する評価や介入の重要性が示唆された。しかし、各項目のオッズ比は0.94から1.04の範囲で推移しており、影響力としては小さいことが考えられる。独居高齢者の居宅生活継続に関連する因子は、ADLだけでなく、家族の支援や生活機能に合わせた居宅サービスを提案すること、身体機能に合わせた家屋環境を設定することも重要になることが考えられる。また、独居高齢者は世帯の中で唯一の生活者でありIADLの遂行も避ける事ができないため、世帯構成に関連してくる可能性が高い。今後はサービスの種類や家族支援の有無、IADLも含めて調査を行い、独居生活継続に対する効果的な支援について検討していく。【理学療法学研究としての意義】要介護状態にある独居高齢者であっても、居宅生活継続を希望される高齢者は多くいる。本研究のように要介護高齢者の大規模集団を対象とした研究によって独居高齢者に重要な生活機能の一部が明らかになったことは、効果的な支援の一助となる。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2012 (0), 48100935-48100935, 2013
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680547684608
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- NII Article ID
- 130004585314
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed