訪問リハビリテーション利用者におけるお手玉リーチの信頼性の検討

DOI
  • 佐藤 千春
    医療法人社団仁生会 訪問リハビリテーション西堀
  • 斉藤 亨
    医療法人社団仁生会 西堀病院リハビリテーション課
  • 工藤 恭子
    医療法人社団仁生会 訪問リハビリテーション西堀
  • 田中 舞
    医療法人社団仁生会 訪問リハビリテーション西堀
  • 高橋 茂樹
    医療法人社団仁生会 西堀病院リハビリテーション課

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抄録

【目的】<BR>動的立位バランスの評価として,Functional Reach Test(以下,FRT)はDuncanらによって考案され,内山らによるとFRTは信頼性・妥当性が高く,簡便かつ定量的な測定が可能であると報告されている.また,FRTは地域在宅高齢者・パーキンソン病患者・脳血管障害や小児における評価としても広く応用されている.しかし,一方では検査方法に特別なマニュアルはないとされ,近年ではFRTに関する身体的要因や測定機器の開発等,様々な検討がなされている.<BR> FRTの代表的な測定方法として,壁に目盛りを設置し測定する方法があるが,壁のそばで評価を行える環境がなければ評価の実施は困難であり,身長により目盛りの設置位置を変更しなければならない等の手間がある.さらには,最大上肢到達と同時に数値を測定するため,立位バランスの悪い被検者に対しては,評価時の転倒事故等の危険が考えられる.また,特殊な機器を使用する測定方法もあるが,特殊な測定機器は高価であり,また持ち運びが困難なために,在宅等ではFRTの評価が困難なことも少なくない.<BR>我々は先行研究として立位におけるお手玉を使用した,より簡便で安全性の高いリーチテストを考案し,健常成人における検者内信頼性を認めたと,第61回北海道理学療法士学術大会にて報告している.しかし,訪問リハビリテーションのような評価場所が限られる場合や有疾患者への適用は検討課題としていた.よって,本研究の目的は訪問リハビリテーション利用者におけるお手玉リーチの日内信頼性を検討することとした.<BR>【方法】<BR>対象は,当訪問リハビリテーション利用者10名(男性3名・女性7名),平均年齢は74歳(54-87歳),主な疾患の内訳は脳血管障害5名・整形疾患4名・その他1名だった. <BR>方法は,自然な開脚立位において,健側または利き手の肩関節を90°屈曲(または外転・水平内転),肘関節伸展・回内させた開始肢位でお手玉を投下した後に,新しいお手玉を把持させ,上肢の高さを可能な限り開始肢位の高さに保ちながら,最も遠くまで上肢が到達した位置で3秒間停止後,お手玉を投下して頂く.そして,この2つのお手玉間の距離を前方リーチ距離・側方リーチ距離・回旋リーチ距離として各々測定した.測定上の注意として,終了肢位でお手玉を投げないこと,支持基底面を変化させないこと,手関節掌背屈0度にて実施すること,上肢は床に対し水平に保つこと,数値の測定はお手玉間の直線距離ではなく,リーチ方向に対しお手玉遠位端に引いた垂線の距離を測定することとした.<BR>測定はまず十分に練習をした後,3回ずつ測定を行い,前方リーチ距離・側方リーチ距離・回旋リーチ距離における1回目・2回目・3回目の標準誤差(以下,SEM)・級内相関係数(以下,ICC)・95%信頼区間(以下,95%CI)を検討した.統計処理にはSPSS11.0Jを使用した.<BR>【説明と同意】<BR>評価時は転倒事故等に十分注意し,評価者をそばに配置して行った.また,研究に際し,当院の倫理検討委員会にて承諾の後,被検者には課題を十分に説明し書面にて同意の下,評価を実施した.<BR>【結果】<BR>SEMの結果,前方リーチ距離は1.30cm,側方リーチ距離は1.09cm,回旋リーチ距離は1.08cmだった.またICCは,前方リーチ距離は0.92,側方リーチ距離は0.89,回旋リーチ距離は0.88だった. 95%CIは,前方リーチ距離は0.77~0.98,側方リーチ距離は0.67~0.97,回旋リーチ距離は0.67~0.97だった.<BR>【考察】<BR>先行研究によると,健常人におけるFRTのICCは0.92,健常成人におけるお手玉リーチのICCは0.97~0.98だったと報告されている.また,健常成人におけるお手玉リーチテストのSEMは,前方リーチ距離は2.20cm,側方リーチ距離は2.20cm,回旋リーチ距離は2.80cmだった.<BR>対馬らによると,信頼性の検討においてはICCのみでは不十分でSEMや95%CIの検討が必要であり,ICCが高くSEMが低いときに信頼性が高いといえると報告されている.今回の結果は,ICCが0.88~0.92と高く,SEMも健常成人の結果と比較しても1.08~1.30cmと低かったことから,訪問リハビリテーション利用者におけるお手玉リーチの信頼性は高い結果であったと考える.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>内藤らによると,訪問リハビリテーションでは環境的・時間的問題があり,評価を行うことに難しさがあると報告されている.今回の結果から,訪問リハビリテーション利用者におけるお手玉を使用したリーチ評価は信頼性も高く,訪問リハビリテーションのような評価場所・評価機器が限られる環境において,簡便で実用性の高い評価法であると考える.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), EbPI2408-EbPI2408, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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