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成長期男子サッカー選手における腰痛と側腹筋群の形態および筋収縮能との関係
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Description
【目的】<BR> 成長期スポーツ選手における腰痛症には、脊椎関節突起間の疲労骨折である腰椎分離症が認められることがある。腰椎分離症はコンディショニングやリハビリテーションを実施することにより、機能的予後は良好ではあるものの将来的な腰椎辷症への移行が懸念されるなど重篤化する可能性がある。腰椎分離症は14歳頃を中心とする成長期のスポーツ選手に発症することから、同時期における障害予防のための対策が必要である。我々は第8回発育発達学会において、成長期男子サッカー選手の側腹筋群の形態と機能について報告した。その結果、成長期男子サッカー選手は大学生男子サッカー選手に比較して静的な筋厚は同等であるものの、腹部引き込み動作による動的な筋厚は著明に低値を示していた。したがって、成長期の未発達な腹筋群は体幹機能が十分に確立されておらず、容易に腰痛を惹起することが推測された。しかしながら、成長期サッカー選手において腰痛を有する選手の腹筋群の形態ならびに筋収縮能については不明である。<BR> そこで、本研究の目的は腰痛の有無が成長期男子サッカー選手の側腹筋群の形態ならびに筋収縮能に与える影響について明らかにすることとした。<BR>【方法】<BR> 対象は2008~2009年度にメディカルチェックを行った成長期男子サッカー選手のべ122名(13.6±0.5歳)である。メディカルチェック時の問診ならびに理学的所見から腰痛を認めた選手を腰痛群(n=21)、腰痛を認めなかった選手を健常群(n=101)とした。<BR> 側腹筋群の検査には超音波断層撮影装置(SonoSite180PLUS; SonoSite, WA, USA)を用いた。被験筋は両側の内腹斜筋、腹横筋とし、プローブを前腋窩線上の第10肋骨下縁と腸骨稜との間の中央部に配置させ側腹筋群の水平断像を撮影した。撮影条件として、被験者の安静時ならびに腹部引き込み動作時とし、一側につき各条件で2回撮影をおこない最大筋厚の平均値を算出した。統計処理は安静時と腹部引き込み動作時の筋厚、腹部引き込み動作時の筋厚増加率そして内腹斜筋に対する腹横筋の筋厚比率を求め、2群間の差についてMann Whitney U testを用いて検定をおこなった。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>本研究を実施するにあたり、研究方法が非侵襲的な観察研究であることを口頭ならびに紙面において指導者、保護者、本人に説明をおこない同意を得た。なお、本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得ている。<BR>【結果】<BR>内腹斜筋と腹横筋の安静時筋厚について腰痛群ならびに健常群との間で有意差は認められなかった。安静時に対する腹部引き込み動作による筋厚増加率においても2群間で有意差を認めなかった。内腹斜筋に対する腹横筋の筋厚比率は、安静時において右側腹筋群の筋厚比率が腰痛群で0.34±0.08、健常群で0.38±0.10であり両群間で有意差を認めた(p<0.05)。また、腹部引き込み動作時では、腰痛群の右側腹筋群で0.43±0.13、健常群で0.49±0.13、腰痛群の左側腹筋群で0.45±0.15、健常群で0.51±0.14であり左右ともに有意差を認めた(p<0.05)。<BR>【考察】<BR>有痛性疾患と腹横筋との関係を記した報告は多く、疼痛の存在が腹横筋活動を低下させたり、活動のタイミングを遅延させたりするなどの報告がある。本研究では静的と動的な腹横筋や内腹斜筋の筋厚において腰痛の有無による差を認めなかった。しかしながら、内腹斜筋に対する腹横筋の筋厚比率において腰痛の有無による有意差を認め、腰痛群では内腹斜筋に対する腹横筋の筋厚比率が低値を示していた。有痛性疾患ではローカルマッスルである腹横筋に対して抑制的に働き、グローバルマッスルである内腹斜筋に相対的な活動の増加が報告されていることから、本研究の結果も同様の原理が働いていたものと推測される。先行研究の結果に加え成長期サッカー選手の特徴は、側腹筋群の筋活動が不十分であると同時に腰痛を罹患した場合にはさらに活動の制限が加わる可能性がある。したがって、側腹筋群の未発達から腰痛を発症し、その後の腰痛増悪の悪循環に陥らせないことが必要である。腰痛を有する成長期サッカー選手に対し、速やかなローカル筋である腹横筋の再教育は腰椎分離症など重篤化を予防する上で重要であると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>近年、超音波断層撮影装置を用いた側腹筋群の調査が活発に行われている。超音波断層撮影装置を用いた側腹筋群の観察は深部に存在するローカル筋の活動を観察することが可能であり、選択的に機能する側腹筋群の機能特性を明らかにすることが出来る。本研究により得られた知見は、成長期のスポーツ選手の側腹筋群の活動動態を明らかにし、コンディショニングや腰痛予防における戦略構築の一助になるものと考えられる。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2010 (0), CcOF2058-CcOF2058, 2011
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680547865728
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- NII Article ID
- 130005017351
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed