維持期脳卒中患者に対する下肢装具の実態調査

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  • ─維持期における下肢装具と理学療法士の重要性─

抄録

【はじめに、目的】 脳卒中リハビリテーションは、急性期、回復期の集中リハを経て維持期である在宅リハへと連携している。維持期脳卒中患者にとって、下肢装具(以下、装具)は在宅生活を維持する重要な要素であると考えられる。今回、維持期における脳卒中患者の装具使用状況、装具に関する認識を把握すること目的に実態調査を実施した。調査結果に理学療法士と装具に関する考察を加えて報告する。【方法】 平成22年6月~10月の期間に、西日本23医療機関、介護保険施設を利用する要介護認定者118名を対象とした。調査は対象施設の担当者である医師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士が直接聞き取る1対1形式を用いた。質問方法を統一するために書式にて担当者に説明し調査を実施した。アンケート項目は、要介護度、装具種類、装具の使用期間、耐用年数の知識、処方時の説明者、装具に関する相談者、処方時の説明内容、装具を使用した動作(歩行、立ち上がり、立位、片脚立位、トイレ動作、移乗動作)とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、書面にて調査目的を説明し、調査中の中断も可能である旨を伝え同意を得た。アンケート集計は個人情報が特定されないように配慮をおこなった。【結果】 アンケートの対象者は、要介護1、2、3、4、5の順に15名(13%)、26名(22%)、32名(27%)、24名(20%)、9名(8%)、 要支援1、2の順に7名(6%)、5名(4%)。装着する装具の種類は、プラスティックAFO(以下、PAFO)(継手無)86名(73%)、PAFO(継手有)10名(8%)、長下肢装具8名(7%)、両側金属支柱付短下肢装具8名(7%)、その他6名(5%)。装具の使用期間(平均)5年0ヶ月、現在の装具装着期間(平均)2年10ヶ月であり、装具の耐用年数は、知っている14(15%)、知らない81(85%)であった。装具処方時の説明者は、理学療法士・作業療法士(以下、PT・OT) 65(49%)、医師37(28%)、義肢装具士10(8%)、説明の有無不明20(15%)であった。現在の装具に関する相談先は、PT・OT 58(44%)、義肢装具士34(26%)、ケアマネージャー15(12%)、医師11(9%)、他11(9%)。処方時の説明内容は、動作の安定71(54%)、自分でできることが増える14(11%)、変形予防10(8%)、疼痛軽減4(3%)であった。装具装着による生活改善に関して、改善87(83%)、変化無し18(17%)と回答。そのうち装具装着によって歩行は、独歩6(7%)、杖歩行55(62%)、介助歩行21(24%)、疼痛軽減4(3%)であった。立ち上がりは、手すり無し可能9(11%)、手摺り有り可能44(53%)、疼痛軽減7(9%)であった。動作別の装具の必要性は、立位に必要59、不要29、未回答1。片脚立位に必要61、不要12、未回答9。トイレ動作に必要59、不要27、未回答3。移乗動作に必要33、不要53、未回答2であった。理学療法士とともに装具を使用した機能訓練の実施に関して、実施あり81(92%)、実施なし7(8%)と回答した。【考察】 脳卒中患者の装具に関して、ガイドライン2009では早期から装具を装着した運動療法がすすめられ、横井らは脳卒中患者に対して、在宅に戻った場合でも痙縮の増悪や加齢等による機能低下に対しての治療、装具の必要性を述べている。しかし、急性期、回復期から維持期への装具に関する連携は、各症例によって対応が異なっている。調査結果では、維持期脳卒中患者は、装具の処方時、修理等の相談時ともに、PT・OTが最も関わりがあることを示していた。また、装具の使用状況は、耐用年数を知らず、調整が困難なPAFO(継手無)を使用する症例が73%を占めていた。さらに、維持期脳卒中患者の50%以上が在宅生活を維持するためには、装具を装着し、かつ福祉用具や介助が必要であった。上記より、理学療法士は、維持期脳卒中患者の装具が身体機能やADLに適合しているか確認し、装具を処方する医師、装具を製作する義肢装具士と連携することが重要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 今回の現状調査により、急性期や回復期で処方された装具の維持期のおける使用状況が明確になった。制度上、急性期と回復期の連携は進んでいるが、維持期との連携は限定的である。装具の現状を把握することで、理学療法士が維持期の装具に関して重要な存在になりえる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Ea0349-Ea0349, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680547875200
  • NII論文ID
    130004693398
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.ea0349.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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