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前脛骨筋腱完全断裂を呈した一症例の術後経過
Description
【目的】<BR>前脛骨筋腱(以下TA)断裂は非常に稀な疾患であり、リハビリテーション(以下リハ)を施行する中で経験することは少ない。文献では、下肢の腱断裂症例に対する報告の多くはアキレス腱断裂であり、TA断裂の報告は約50症例程度であった。また、我々の知る限りではTA断裂後、早期に手術、リハを行ったという症例報告は殆ど見当たらない。そのため、術後の荷重開始時期や理学療法プログラム等の詳細な報告はなく、治療方針は明確でない。今回、事故によりTAの完全断裂及び長母指伸筋腱部分断裂を呈した症例に対し、術後早期からのリハを経験する機会を得たので経過を含め報告する。<BR>【方法】<BR>症例は56歳、男性。職業はゴルフ場の清掃業。仕事中、誤って草刈り機で右TAを受傷。他院受診しTA断裂と診断される。創部の洗浄と一次縫合のみ施行し当院紹介となる。受傷翌日に当院でTAを縫合し、シーネ固定(足関節中間位固定)となる。縫合方法は、断裂したTAが短縮しており、初期強度を高めるためにベースボールグラブ縫合とクロススティッチ縫合を併用して行われた。<BR>術後の現症として術部に安静時痛があり、VASで35mm/100mm。下腿部から足部にかけて熱感、腫脹、発赤を認めた。患側下肢以外の筋力はMMT5レベル、著明な可動域制限はなかった。荷重は完全免荷で、移動は車いす、ADLは入浴以外自立していた。理学療法の方針は、当院でのアキレス腱断裂の治療方針を指標としたが、これまでにTA断裂の症例経験がなかったため、免荷時期を術後4週と延長し、比較的十分な経過観察をとった。免荷期間中は足趾運動を行い、可能な限りの廃用性筋力低下の予防に努めた。<BR>理学療法の経過観察の指標としては、歩行能力、関節可動域、VAS、筋力を評価した。<BR>【説明と同意】<BR>発表にあたり症例に十分説明し同意を得た。<BR>【結果】<BR>術後よりシーネ固定(足関節中間位固定)となった。術後2週目で抜糸、ギブス固定(足関節中間位固定)となり、完全免荷での両松葉杖歩行が自立し退院となった。その後、週3回の外来リハとなり、術後3週目で足関節底背屈の自動運動開始、再度ギブス固定からシーネ固定となった。またこの時期より、疼痛自制内での関節可動域訓練が開始となった。術後4週目で装具装着下での全荷重歩行開始。装具は足部がプラスチック素材で、足継手がダイアルロック式の短下肢装具を作製した。足関節の角度調節は背屈に制限なし、TAに過伸張が加わらないように底屈角度7度に調整した。その後、徐々に底屈角度を増大していった。術後2ヵ月目で最大筋収縮開始、装具なしでの全荷重歩行訓練を開始となった。その数日後に職場復帰となった。<BR>患側足関節可動域は、術後2ヵ月までには背屈15度、底屈45度と改善を認めた。VASについては経過良好であり、術後4週目において改善、その後増悪はなかった。<BR>筋力は術後3日目でTAの筋収縮がみられ、術後3週目でMMT2レベルとなり軽度の足関節背屈運動が可能となった。術後2ヵ月目ではMMT2レベルであるが、抗重力位での足関節背屈可動域5度までの自動運動可能レベルまで改善した。<BR>【考察】<BR>過去の症例報告では、TA断裂後6週間の外固定期間が一般的で、後療法で運動療法を行えば、機能回復に術後6~10ヵ月要すると報告されている。今回、外固定期間が4週であった事が早期の機能回復に繋がったと考えられる。<BR>一般的に、アキレス腱断裂の全荷重開始は術後2週で、遅くとも4週である。TAはアキレス腱に比べ、収縮時の張力は低いと考えられる。よって、今回の4週の免荷期間は再断裂の予防期間としては十分であったと考えられる。<BR>また、一般的にアキレス腱断裂術後の固定角度は底屈位とされているが、TA断裂術後の固定角度に関する臨床検討はなされていない。よって、術後TA短縮がある症例では、固定角度を背屈位とし、固定除去後も装具の足継手を底屈制限の調節が出来る様に工夫する事が再断裂予防に寄与する可能性がある。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>TA断裂は臨床上、極めて稀な疾患であり症例報告も少ない。今回、術後早期から2ヵ月までの回復過程の評価を報告した。今後、このような報告を積み重ねていくことにより、TA断裂術後リハの指標に役立っていくのではないかと考える。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2010 (0), CdPF1029-CdPF1029, 2011
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680547962112
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- NII Article ID
- 130005017382
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed