基本バランス能力テストの信頼性・妥当性・臨床的実用性の検討

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抄録

【目的】<BR> 新しいバランス能力の評価バッテリーとして基本バランス能力テスト(Basic Balance ability Test:以下BBTと略す)が望月らによって開発された.しかし,開発者による先行研究では信頼性を見るための検者間一致率について対象者が一人であること,妥当性をみるためにBBTとBerg Balance Scale(以下BBSと略す)の相関をみているが一部患者で検討していることなどが疑問点としてあがった.そこで本研究では,疑問点を解決するような手法で,再度,BBTの信頼性・妥当性・臨床的実用性を検討し,BBTが臨床にとって意義あるバランス評価であるかどうかを明らかにすることを目的とした.<BR>【方法】<BR> 平成22年2月から9月にかけて当院にリハビリテーション目的で入院していた患者14名(男性6名,女性8名,平均年齢75.9±12.8歳)を対象とし,除外基準を座位保持困難,理解困難(指示が通らない場合)とした.対象者に対し理学療法士2名がBBTとBBSを測定した.信頼性は,BBT各項目の検者間一致率を求めた.妥当性は,BBTとBBSの結果からSpearmanの相関係数を求めた.臨床的実用性は,BBTとBBSに要する時間を比較し検討した.<BR>BBTとは,端座位における姿勢保持と重心移動,立位における姿勢保持・重心移動・ステップ動作,および立ち上がり動作を検査課題としているものである.検査項目は25項目とし,各項目を不可:0点,不安定:1点,安定:2点で評定し,合計で50点満点の評価指標である.<BR><BR>【説明と同意】<BR> 倫理的配慮として研究参加同意書を作成した.任意で同意を得た方に対してのみ実施するものとし,検査を拒否されても患者には不利益になることはないこと,途中で拒否されても同様に患者には不利益はないとのことを説明した.<BR>【結果】<BR> BBTの各項目における検者間一致率は,平均で0.83±0.13(0.57~1.00)を示し,一致率は高かった. BBTとBBSについてSpearmanの相関係数を算出した結果,r=0.733(p<0.01)と有意な相関を認めた.BBTに要する時間は562±90秒(約9分),BBSに要する時間は856±202秒(約14分)となった.<BR>【考察】<BR> 結果より,検者間一致率は平均で0.83±0.13(0.57~1.00)と高値を示し,信頼性があるといえる. <BR>妥当性に関して,同一検者が行ったBBSとの相関を算出した.BBSは,臨床的に非常に有用な検査で,高い妥当性が認められている.BBTとBBSについてSpearmanの相関係数を算出した結果,r=0.733(p<0.01)と有意な相関を認められたため,妥当性が確認できた.<BR>BBTに要する時間は平均9分で,BBSに要する時間は平均14分であった(文献的に報告されている検査時間も平均15分である) .その理由として,BBTはBBSのようにストップウォッチや20cm台の準備を必要とせずスムーズに検査できることが,検査の効率化につながったと思われた.このような点からBBTは,BBSに比べ,評価の簡便性に優れ,臨床的実用性は高いと考えた.<BR>しかし,BBTの3段階評価では採点が粗く,再評価した場合などの経時的変化が点数として表れにくい.そのため,バランス能力の細かな変化をとらえにくいという課題があると考えた. <BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 望月が考案したBBTをバランス評価指標として一般的に使用されているBBSと比較して,信頼性が認められた.また,検者間一致率が高いことより妥当性が認められ,さらにBBSよりも短時間で行えるものなので,臨床的実用性が高いと考えられた.これらのことよりBBTは臨床に有益なバランス能力評価指標であることが確認できた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), AbPI2043-AbPI2043, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548028416
  • NII論文ID
    130005016583
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.abpi2043.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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