体重支持指数(WBI)とH/Q比の関係

  • 藤原 賢吾
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 松岡 健
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 岩本 博行
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 江口 淳子
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 田代 成美
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 江島 智子
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 清水 紀恵
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 古田 幸一
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 中山 彰一
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科

Bibliographic Information

Other Title
  • H/Q比の測定方法に着目して

Search this article

Description

【目的】臨床現場において筋出力を十分に発揮できない状態をよく経験する。筋量に見合う筋出力を得るためには動筋と共に拮抗筋の関与も重要である。客観的な筋力評価法としては大腿四頭筋(以下Quad)筋力を用いた体重支持指数(Weight Bearing Index:以下WBI)があり、嵩下らは慢性疼痛疾患患者は、体重あたりの筋質量(% Muscle volume:以下%MV)に対しWBIが健常人に比べ有意に低値を示し、原因として心理的・肉体的ストレスによる反射性筋スパズムの影響があると報告している。そこで、今回はQuadの拮抗筋であるハムストリングス(以下Ham)の筋力とWBIの関係を、膝周囲の筋バランスの指標であるHamとQuadの筋力比(以下H/Q比)を測定し、検討した。また、H/Q比の測定方法により筋出力低下の状態を知る指標となり得るか検証した。<BR>【方法】対象は下肢機能に問題のない健常人41名(男性31名、女性10名)、平均年齢は24.51±4.21歳、身長平均は167.87±8.63cm、体重平均は65.21±13.91kgであった。%MVの測定にはBiospace社製InBody720を用い、8電極式多周波インピーダンス法にて測定し、筋肉量(kg)/全体重(kg)×100を%MVとした。筋力測定にはBIODEX社製system3を用い、膝関節屈曲70°位にてQuadの等尺性随意最大筋力を測定し、続けてHamの等尺性随意最大収縮を測定した。測定時間は7秒間、インターバル10秒とし、左右2回ずつ行いその平均値を用いた。得られたデータより、Hamの最大筋力をQuadの最大筋力で除すことによりH/Q比を算出した。WBIはQuadの最大筋力を体重比にて算出した。算出した%MVとWBIの値より、脇元らの健常人%MVとWBIの関係(%MV:82→WBI:130、79→120、76→110、72→100、69→90、65→80、62→70、60→60)を用いて、%MVの基準値よりWBIが高値を示した群(21名、以下WBI高値群)と低値を示した群(20名、以下WBI低値群)に分類した。WBIとH/Q比の関係にはPearsonの相関係数を用いた。2群のH/Q比の比較にはMann-WhitneyのU検定を用い、各群での筋力の1、2回目の比較はWilcoxonの符合順位和検定を用いた。H/Q比、筋力の比較は左右ともに行った。有意水準は危険率1%未満とした。<BR>【説明と同意】全ての被験者には動作を口頭で説明するとともに実演し、同意を得たのちに実験を行った。<BR>【結果】右WBI(平均109.91±23.66)と右H/Q比(平均40.40±9.05%)において有意な負の相関(r=-0.51、p<0.01)、左WBI(平均106.11±26.66)と左H/Q比(平均38.59±9.00%)においても有意な負の相関を認めた(r=-0.62、p<0.01)。H/Q比は、WBI高値群(右平均36.82±6.47%、左平均34.11±8.86%)とWBI低値群(右平均44.17±9.95%、左平均43.30±6.49%)の間に左右ともに有意差が認められた(p<0.01)。筋力は、WBI高値群では左右ともに1、2回目のQuadの筋力に有意差を認めたが(p<0.01)、WBI低値群では左右ともに1、2回目のQuadの筋力に有意差は認めなかった。また、2群ともに左右で1、2回目のHamの筋力に有意差を認めた(p<0.01)。<BR>【考察】左右ともにWBIとH/Q比に負の相関が認められ、本研究の測定方法によるH/Q比は膝周囲の筋バランスだけでなく、体力を表す指標となり得ることが示唆された。左右ともにWBI高値群に比べWBI低値群の方がH/Q比が有意に高かったこと、WBI高値群では1、2回目のQuadの筋力に有意差があったが、WBI低値群では有意差が存在しなかったことから、QuadとHamを連続測定する方法が筋出力の機能低下の指標となる可能性が示唆された。要因としてWBI低値群では反射性筋スパズムの影響で拮抗筋の相反神経抑制など筋緊張のコントロールが機能低下を生じていること、ウォームアップ非実施の測定のため初回測定時に最大筋出力が得られなかったことなどが考えられ、現段階では推測の域に留まり今後詳細な検証を続けていく必要がある。<BR>【理学療法学研究としての意義】%MVとWBIの比較により慢性疼痛疾患患者などにみられる反射性筋スパズムによる機能低下をみることができるが、本研究のH/Q比測定方法の更なる検証により、簡便に筋出力の機能低下を知る指標となる可能性があると考える。

Journal

Keywords

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top