呼吸器疾患患者に対する運動耐容能評価法の検討

DOI
  • 眞鍋 悟志
    特定医療法人 岡波総合病院 畿央大学大学院健康科学研究科
  • 井上 登太
    NPOグリーンタウン呼吸嚥下研究グループ
  • 田平 一行
    畿央大学大学院健康科学研究科 畿央大学健康科学部理学療法科

書誌事項

タイトル別名
  • 2分間歩行と6分間歩行との比較から

抄録

【目的】呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)を遂行するにあたり検査・評価項目は多岐にわたり、呼吸困難感のある症例にとって、すべてを一度に評価するには負担が大きすぎると思われる。とりわけ運動耐容能評価では6分間歩行試験(6MWT)が一般的によく用いられているが、これは6分間運動し続ける試験であり負担が大きい。近年、2分間歩行試験(2MWT)に関する研究が報告されている。今回、運動耐容能評価としての2MWTの特徴と妥当性について検討した。研究(1)として2MWTと6MWTの関係と身体負荷量の違いを明らかにすること。研究(2)として一般的な呼吸リハ評価項目と2分間歩行距離(2MWD)及び6分間歩行距離(6MWD)との相関分析を行い,その特徴を探る事を目的とした.<BR>【説明と同意】被検者には口頭および書面にて本研究の目的や方法、リスク等について説明し自由意思により承諾を得た。また本研究は特定医療法人岡波総合病院倫理委員会の承認を得て実施した。<BR>【方法】(対象) 6分間歩行を完歩出来た慢性安定期の呼吸器疾患症例11名(男性9名、女性2名 平均年齢71.3±7.2歳)。(歩行試験) 6分間および2分間の歩行試験を施行した。歩行コースは10mとし,往復させた。歩行試験終了時にHR,SpO2,および修正Borgスケールにて呼吸困難感,下肢疲労感を測定した.2種類の歩行試験の順番はランダムとし,日を変えて実施した。その他測定方法は「呼吸リハビリテーションマニュアル―運動療法―」に準じた.(呼吸リハ評価指標)呼吸リハでよく用いられる、身体組成(身長・体重・BMI)・肺機能検査(%VC・%FEV1・FEV1%)・筋力検査(握力,CS-30)・MRCスケール・ADL評価(NR-ADL) とした。<BR>(解析方法)6MWD・2MWDと呼吸リハ評価指標,HR,SpO2,呼吸困難感,下肢疲労感の歩行試験間の相関は、ピアソンの相関係数を用い、ADL評価のみスピアマンの順位相関係数で検討した。歩行距離,息切れ,下肢疲労感,SpO2,HRの2つの歩行試験間の比較は対応のあるt検定を用いた。いずれも有意水準は5%未満とした。 <BR>【結果】研究(1)2種の歩行試験間の歩行距離(r=0.949 p<0.01) ・SpO2 (r=0.933 p<0.01) ・心拍数(r=0.758 p<0.01)において有意な相関がみられた.歩行試験間の比較では歩行距離および下肢疲労感は6MWTの方が有意に増加(p<0.05)していたが,HR,SpO2,呼吸困難感,には有意差を認めなかった。しかしながら、呼吸困難感・下肢疲労感は6MWTの方が2MWTより高値を示す傾向を認めた。研究(2)歩行距離との相関係数は2MWD,6MWDの順に CS-30(r=0.825 p<0.01,r=0.783 p<0.05),MRC(r=-0.752 p<0.01,r=-731 p<0.05),ADL(r=0.759 p<0.01,r=0.784 p<0.01)と有意な相関がみられた。<BR>【考察】研究(1)2MWTの利点としては、SpO2とHRにおいて有意な差がみられないことから、2MWTは6MWTと同レベルの身体負荷量をかけることができるテストであると考えられる。その反面、歩行距離や時間は有意に短く呼吸困難感・下肢疲労感においてほとんどの症例で6MWTより2MWTの方が低値を示したことから、運動量は低く自覚的な疲労感が少ないのではないかと考えられる。このことから身体負荷量に差はないものの運動量や自覚症など患者にかかる負担が少ないテスト法であると考える。また、佐竹らによると酸素摂取量は歩行開始2~3分でプラトーに達すると報告されている。よって、2MWTは低酸素血症のある症例に対して、低酸素状態で運動を強いることが少なくなるため、低リスクであると考える。<BR>研究(2)6MWD・2MWDと呼吸リハ評価指標との関連で相関がみられた項目が共通していたという結果から2MWTの特徴として、6MWTと同様の影響や反応がみられるのではないかと考えられる。<BR>以上の点から2MWTは従来行なわれている6MWTと比べ身体負荷量の低く低リスクでありながら、妥当性のあるテスト法であることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>2分間歩行試験の有効性を明らかにし、運動耐容能評価時間を短縮することにより、患者様および医療者の負担の軽減を図ることができる。<BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), DaOI2044-DaOI2044, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548240896
  • NII論文ID
    130005017420
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.daoi2044.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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