変形性膝関節症のGradeの違いによる歩行特性

DOI
  • 西田 隆一郎
    医療法人社団 鎮誠会
  • 大森 茂樹
    医療法人社団 鎮誠会 千葉大学大学院医学薬学府先端生命科学専攻
  • 栗原 靖
    医療法人社団 鎮誠会 茨城県立医療大学保健医療科学研究科理学療法学・作業療法学専攻
  • 倉林 準
    杏林大学保健学部理学療法学科内部障害理学療法学研究室
  • 八並 光信
    杏林大学保健学部理学療法学科内部障害理学療法学研究室

抄録

【目的】<BR> 変形性膝関節症(OA)の進行は,歩行や日常生活動作の頻回に繰り返される力学的な負荷が大きく関係すると考える.そのため動作解析はOAの発症要因を検討する上で有用な手段である.<BR> OAの歩行中における下肢関節角度,関節モーメントから関節まわりにかかる力学的データを検討した報告は散見されるが,OAのgradeにおける基質的変化と歩行解析の関係を明らかにした報告は少ない.本研究は,OA患者の歩行解析とOAのgradeについて検討した.<BR><BR>【方法】<BR> 対象は,変形性膝関節症と診断された患者49名(男性6名,女性43名,年齢65.2±9.0歳)とし,測定下肢は65肢とした.さらにX線画像を用いて,Kellgren and Lawrence gradingにより,grade1(骨硬化像または骨棘),grade2(関節裂隙3mm以下の狭小化),grade3(関節裂隙の閉鎖または亜脱臼)の3群に分類した.測定下肢の内訳はgrade1:18肢,grade2:31肢,grade3:16肢であった.<BR> 歩行解析は三次元動作解析装置(VICON MX-3:Vicon Motion Systems),床反力計(AMTI)2台を用いた.剛体リンクモデルは,Davis,KadabaのHelen Hayes marker setを用い,7体節,22マーカを貼付した.課題動作は通常歩行とした.<BR> 計測データは,解析ソフトBodyBuilder(Vicon Motion Systems)を用いて,歩行中の股関節,膝関節,足関節モーメント,パワーを算出した.各データは1歩行周期で正規化し,平均波形を作成した.<BR><BR>【説明と同意】<BR> 所属施設における倫理委員会の許可を得た.対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明した.同意が得られた場合のみ対象として計測を行った.<BR><BR>【結果】<BR> 1)股関節モーメントは,立脚初期でgradeの進行により,屈曲モーメントが減少傾向を示した.立脚中期以降では波形パターンに大きな変化はみられなかった.<BR> 2)膝関節モーメントは,gradeの進行により屈曲モーメントが増加傾向を示した.波形パターンはgrade1,2で2峰性の様相を示したが,grade3では波形が平坦化した.<BR> 3)足関節モーメントは,gradeの進行により底屈モーメントが増加傾向を示した.波形パターンは,底屈モーメントの最大時期がgrade1で40%:136Nm,grade2で42%:156Nm,grade3で43%:223Nmとなる1峰性の波形パターンを示した.<BR> 4)股関節パワーは,立脚初期において,遠心性パワーがgrade1で13%:367W,grade2で12%:193W,grade3で13%:161Wとなりgrade2,3で減少傾向となった.立脚中期での求心性パワーはgrade1で32%:-39W,grade2で32%:-54W,grade3で33%:-218Wとなりgrade3で減少傾向となった.<BR> 5)膝関節パワーは,立脚初期において遠心性パワーがgrade1で6%,grade2で15%,grade3で17%となりgradeの進行により最大時期が遅延した.grade1では歩行周期中25%で遠心性から求心性に変換したのに対し,grade2,3では30%から40%にかけて緩やかに変換した.立脚後期での求心性パワーはgrade1で48%:-711W,grade2で50%:-475W,grade3で55%:-365Wとなり,gradeの進行により最大時期が遅延し,最大求心性パワーが増加傾向を示した.<BR> 6)足関節パワーは,grade2,3で,求心性パワーが歩行周期中15%から40%で減少傾向を示し,最大値はgrade1で31%:-245W,grade2で32%:-400W,grade3で32%:-320Wとなった.求心性から遠心性への変換時期は,grade1で36%,grade2で42%,grade3で43%となり,gradeの進行により遅延した.<BR><BR>【考察】<BR> gradeの進行により,膝関節モーメントにおいて2峰性の波形パターンが平坦化したこと,また膝関節パワーにおいて30%から40%の時期にかけて緩やかに遠心性から求心性に変換したことからDouble Knee actionが減少したことが考えられる.<BR>立脚中期で股関節に対して,膝関節,足関節のモーメント,パワーの波形パターンに特徴がみられたこから,末梢関節影響がOAの歩行に寄与すると考える.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> OAのgrade間の歩行特性を解明していくことで,臨床での治療,予後予測の一助になると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), CeOS3041-CeOS3041, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548246400
  • NII論文ID
    130005017409
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.ceos3041.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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