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振動刺激が頚髄損傷患者における肘関節屈筋群の痙縮に与える影響
Bibliographic Information
- Other Title
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- Single Case Designを用いての検討
Description
【目的】<BR> 頚髄損傷患者は上肢の筋緊張が亢進し,関節運動が妨げられることが多く,push up動作などの残存機能を使用した動作の再獲得に難渋する例を経験する.<BR> 痙縮を抑制させる方法として,緊張性振動反射(Tonic Vibration Reflex,以下TVR)を用いた方法が知られている.TVRとは筋へ振動刺激を加え,筋紡錘のIa線維群を興奮させることにより,反射性にα-運動神経を興奮させ持続的な筋収縮を誘発させるものである.先行研究によると,TVRを抑制したい痙縮筋の拮抗筋で誘発させ,相反抑制による痙縮抑制の可能性を示唆している.TVRによる痙縮抑制についてはいくつかの報告はあるが頚髄損傷患者の痙縮に関する報告は少ない.本研究の目的は,頚髄損傷患者の上腕二頭筋の痙縮を抑制させるために用いた上腕三頭筋への振動刺激の効果を検討することである.<BR>【方法】<BR> 対象は,頚髄損傷,頚椎後縦靭帯骨化症(以下OPLL)を罹患した90歳男性とした.画像所見は,C3,C4レベルMRI T2強調画像で脊髄内に高信号領域を認めた.CT画像でC2の椎体後方からC5までOPLLを認めた.明らかな骨折は認めなかった.基本的動作は全介助で,食事動作は車椅子座位にて右上肢で口へ運び,左上肢は添える程度可能であった.<BR> 本研究は,発症後1ヶ月から開始した.従属変数として,介入前後に左肘関節伸展角度と伸展方向のModified Ashworth Scale(以下MAS)を測定した.関節角度は,左肘関節自動介助運動の最終域にて自動で静止した状態で測定した.<BR> 治療は,Single Case Design(A1B1A2B2型)を用いて,第1基礎水準測定期(A1期),第1操作導入期(B1期),第2基礎水準測定期(A2期),第2操作導入期(B2期)に分けて行った.A1期は,2週間,左上腕二頭筋のストレッチングと左肘関節自動伸展運動を10回×3~4セット行った.B1期では,2週間,A1期の内容に加え,左上腕三頭筋へ振動刺激を加えた関節運動を実施した.振動刺激開始と同時に行った上腕三頭筋による10秒の等尺性収縮を3セットや,振動刺激開始10秒後からの自動伸展最終域での10~30秒の伸展活動を3セット行った.刺激箇所は,左上腕三頭筋筋腹遠位1/3とし,周波数は約70Hzとした.A2期では,A1期と同様の内容とし,期間は伸展角度に著変を認めなくなる期間(1週間)とした.B2期では,7週間,A1期の内容に加え,振動刺激開始30秒後からの自動伸展最終域での30~90秒の伸展活動を3セット行った.<BR>【説明と同意】<BR> 対象とその家族には本研究の主旨を十分に説明し同意を得た.<BR>【結果】<BR> B2期に著明な左肘関節伸展角度の増加を認めた.経日的な介入直後の左肘関節伸展角度の近似直線の傾きと経日的な介入前後の左肘関節伸展角度の変化量はそれぞれ,A1期の0.61と12.9度から,B1期の0.67と19.0度へ増加し,A2期において-0.28と17.0度へ減少した後,B2期の0.90と19.5度へ増加した.経日的な介入前の左肘関節伸展角度の近似直線の傾きは,A1期の0.42から,B1期の-0.37へ減少し,A2期において0.41へ増加した後,B2期の0.91へ増加した.左肘関節の伸展方向へのMASは,A1期とB1期において,介入前1+~2と介入直後1~2であり,A2期とB2期において,介入前1+と介入直後1であった.<BR>【考察】<BR> B2期で認めた介入前後の近似直線の傾きと変化量の平均値の増加のメカニズムは,上腕三頭筋への振動刺激により,同筋の筋紡錘を介したIa線維群の興奮が脊髄内の抑制性介在ニューロンを介し,相反性に上腕二頭筋のα-運動神経の興奮性を抑制したものと考えられる.<BR> B1期で認めた介入前の近似直線の傾きの減少と変化量の大きなばらつきの理由に,以下の2点がB2期と比較した場合考えられる.1つ目は,振動刺激を加えた時間が短く,上腕二頭筋の筋緊張が相反性に低下する前に刺激が終了した可能性がある.2つ目は,MASが介入前後で高く,上腕二頭筋の痙縮が振動刺激の効果を覆った可能性がある.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 頚髄損傷患者において,拮抗筋へ振動刺激を加え上腕二頭筋の痙縮を軽減し,肘関節伸展角度を確保することで上肢を用いた基本的動作やADL動作を拡大できる可能性が示唆された.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), B4P1105-B4P1105, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680548288768
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- NII Article ID
- 130004582091
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed