- 【Updated on May 12, 2025】 Integration of CiNii Dissertations and CiNii Books into CiNii Research
- Trial version of CiNii Research Automatic Translation feature is available on CiNii Labs
- Suspension and deletion of data provided by Nikkei BP
- Regarding the recording of “Research Data” and “Evidence Data”
高齢者の外出行動の関連要因
Description
【目的】高齢者における外出行動は、将来の移動能力や日常生活機能の保持のために重要な活動であり、外出を促すことが保健指導において重要な課題となっている。外出の必要性に関する報告は散見されるものの、外出を阻害する要因に関する検討は比較的少なく、外出を促進するための具体的な方策を検討することが容易ではない。そこで本研究では、地域在住高齢者における外出行動に関連する要因を明らかとすることを目的とした。<BR>【方法】対象は東京都に居住する女性高齢者1182名(平均78歳)とした。対象者の募集はダイレクトメールにて高齢者のための健康診査受診を周知し、その健診を受診し、調査項目に欠損のなかった者を分析対象とした。<BR>調査項目は、外出頻度、年齢、身長、体重、握力、足底屈筋力、膝伸展筋力、開眼片足立ち保持時間、最大歩行速度、timed “Up & Go” test、軽い体操の実施状況、定期的な運動やスポーツの実施状況、過去1年間の転倒経験、脳血管疾患、心疾患、60歳以降の骨折、変形性関節症の既往、主観的健康感、転倒恐怖、軽い尿漏れ、憂鬱感の有無を調査した。<BR>分析は、外出行動調査から「毎日外出している」群と「毎日は外出しない」群とに対象者を分類し、連続変数についてはt検定、カテゴリー変数はχ2検定を用いて調査項目を群間比較した。有意差の認められた項目を独立変数とし、外出行動を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施して、外出行動と関連する要因を調べた。<BR>【説明と同意】本研究は東京都健康長寿医療センターの倫理審査委員会の承認を得て実施し、対象者には研究の主旨が説明され、事前に書面にて同意を得た。<BR>【結果】群間比較の結果、年齢、握力、膝伸展筋力、開眼片足立ち保持時間、最大歩行速度、timed “Up & Go” test、定期的な運動やスポーツの実施状況、過去1年間の転倒経験、変形性関節症の既往、主観的健康感、転倒恐怖、軽い尿漏れの有無において有意差が認められた。これらの項目を従属変数として投入した多重ロジスティック回帰分析では、主観的健康感と尿漏れにおいて外出行動と有意な関連が示された。毎日外出しないことに対して、主観的に健康だと感じていないことと、尿漏れがあることのオッズ比はそれぞれ1.8(95%信頼区間 1.3―2.7)と1.5(95%信頼区間 1.1―2.0)であった。<BR>【考察】外出は身体活動向上のために重要な課題であり、高齢期においては廃用症候群を予防するために高頻度の外出が推奨されている。我々は外出行動との関連で高齢者の生活空間に着目し、生活空間の狭小化と日常生活機能との関係を調べてきた。虚弱高齢者においては、生活機能保持のために少なくとも週1回以上近隣へ外出をする必要性が明らかとされた(Shimada H, et al. Arch Gerontol Geriatr 2009)。今回は在宅に居住する比較的健康な高齢者を対象として、毎日外出を行わない高齢者が、どのような要因を有するかを検討し、外出行動支援のための知見を得ることを目的に分析を行った。<BR>その結果、毎日外出を行わない群は、行う群と比較してより高齢であり、運動機能が低く、定期的な運動を行わない者が多く、各種老年症候群を有していた。これらの結果は、身体機能の低下した老年症候群を有する高齢者が外出を毎日しない傾向にあることを示し、毎日外出しない高齢者は、将来、より高度な機能低下を起こす危険性が高いことが示唆された。これらの項目の中で、主観的健康感と尿漏れが多重ロジスティック回帰分析にて有意な項目として残り、外出との独立した関係が明らかとなった。主観的健康感は社会的活動や能動的活動との関連が認められており、また、尿失禁についても外出を制限する要因であることが示されており、本研究でも先行研究を支持する結果を得た。一方、運動機能については多重ロジスティック回帰分析において有意な項目ではなくなったが、これは本研究における対象者の運動機能の状態が比較的良好であり、外出を制限するほどには低下していなかったことが原因として考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】今後の高齢社会の進展を考慮すると、高齢者における健康増進のための対策は、ますます社会的な重要性をもつようになるだろう。健康増進あるいは介護予防のために運動は重要な要素であり、理学療法士は高齢者の健康増進を担う中核的な役割を果たすべき位置にいる。その理学療法士が、運動だけではなく外出といった健康行動や、その関連要因である主観的健康感、および尿漏れといった心理的側面や老年症候群に目を向け、多角的な視点から高齢者に対応できることは理学療法士の職域を拡大することにもつながると思われる。本研究の結果は、理学療法士が高齢者に対応するとき検討すべき視点を示唆しており、意義は高いと考えられた。
Journal
-
- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
-
Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), E3O1194-E3O1194, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
- Tweet
Details 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680548314496
-
- NII Article ID
- 130004582758
-
- Text Lang
- ja
-
- Data Source
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- Abstract License Flag
- Disallowed