肺内パーカッションベンチレーター(IPV)の短期治療効果の検討
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- 自然気胸・無気肺を繰り返す強直性脊椎症候群の1症例を通して
Description
【目的】<BR>今回、著しい脊椎・胸郭の変形により徒手的呼吸肺理学療法効果が乏しく、過去2回の自然気胸の既往により強制吸気を蘇生バックや機械的排痰介助(以下、MI-E)が施行できない侵襲的陽圧換気療法中の強直性脊椎症候群の患者に対し、パーカッションベンチレーター(以下、IPV)による治療を短期間施行した。慢性的な右下葉無気肺を呈していた本症例に対しIPVを試行した結果、無気肺の改善など良好な経過が得られたので報告する。<BR><BR>【方法】<BR>対象は、1990年より在宅人工呼吸療法中の46歳男性、約1時間の呼吸器離脱が可能でADLは自立レベルであった。2008年10月、呼吸不全と呼吸器離脱時にVisual analog scare(以下、VAS)10の激しい頭痛により入院。入院後、呼吸器機種の変更や設定値の変更など施行したが、無気肺や呼吸機能の著明な改善は認められなかった。治療に難渋する症例に対し、入院から2か月経過した時点よりIPVによる治療を開始した。設定は気管カニューレに直接IPV回路を接続、気道内圧に留意しながら操作圧20psi、パーカッション回数を280回/minの浅い振幅で3分間、130回/minの深い振幅で1分間を1セットとし、1回の治療で3セットの計12分、1日2回の治療を施行した。また、体位ドレナージ効果を期待し左側臥位の体位にて施行した。1ヶ月間、IPVを毎日施行し、治療前後を血液ガス、胸部CT、%SpO2、EtCO2、VCで治療効果判定を行い、呼吸器離脱時の頭痛をVASで評価した。<BR><BR>【説明と同意】<BR>本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき説明を行い、患者本人の同意を得た上で報告する。<BR><BR>【結果】<BR>血液ガスでは著明な改善は認められなかったが、VC600mlから780ml、EtCO243mmHgから35mmHgの改善が認められ、胸部CTでは右下葉の無気肺の改善も認められた。しかし、1時間の呼吸器離脱が必要となる本症例にとっては、IPV治療後も呼吸器離脱5分で%SpO2は低下しないものの、VAS3程度の頭痛が出現し、在宅生活に向け期待した治療効果に結びつかない結果となった。<BR><BR>【考察】<BR>IPVの導入にあたり、メーカーのマニュアルは存在するものの、本症例はマニュアル通りの方法では、特に高頻度のパーカッション設定で肺深部までパーカッション流の深達性が得られず、換気効率の低下から開始直後にVAS 3前後の頭痛が出現しているものと考えられた。また、気胸の危険性があり、IPV作動圧も使用中のPLV100の気道内圧を上限とした設定を行い、通常設定の50%の操作圧にて実施した。治療方法の確定に約1週間を要し、確定後1カ月間のIPV治療により著明なVCの改善や無気肺の改善、IPV実施後の排痰回数の増加と呼吸機能の改善、維持には効果が得られた。しかし、1時間の呼吸器離脱が必要となる本症例にとっては、呼吸器離脱5分で頭痛が出現し、期待した治療効果に結びつかない結果となった。この要因として考えられるのは、著明な無気肺の改善を得るにはIPV 操作圧が低圧であった事が一番の要因と考えられた。また、血液検査値からも、圧縮酸素を動力源とした点も考慮すべき点となった。大矢らは、IPVは排痰効果や換気障害を改善させることは可能だが、MI-Eや蘇生バッグのような胸郭の可動域の改善効果はない為、従来の徒手的呼吸理学療法との併用が望ましいと述べている点からも、本症例のような胸郭の変形が著しい患者に対しての呼吸理学療法の再考も必要であると考えられた。 <BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>IPVについては、治療頻度、操作圧など使用方法は報告事例により異なっており、治療方法の確立した文献報告が得られない状況である。今回の経験より、神経筋疾患患者のみならず慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸理学療法や、IPVが持つドラッグデリバリー効果により肺炎の予防としても効果を発揮するものと考えられた。しかし、継続的な実際の使用に当たっては、本体価格が高額な点や保険点数などの諸々の問題が挙げられるのが現状である。実際の治療場面では、非侵襲陽圧換気療法施行中の患者や充分なPCFが得られない患者に対しては、流動化した痰によって気道閉塞を起こす可能性もあり、IPVを使用する患者の状態によってはMI-Eとの併用も考慮する必要があると考える。今後、呼吸理学療法も日々進歩する医療技術や医療機器に対応しながら治療効果を最大限に引き出すために、本研究のような治療経験が必要になると考える。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), D4P1171-D4P1171, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680548597248
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- NII Article ID
- 130004582623
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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