脳卒中発症後、初回に処方される短下肢装具の全国と都道府県との比較

DOI
  • 平山 史朗
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科
  • 島袋 公史
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科
  • 藤﨑 拡憲
    熊本託麻台病院 リハビリテーション部
  • 山城 勉
    熊本託麻台病院 リハビリテーション部
  • 渡邉 英夫
    社会保険大牟田天領病院 リハビリテーション科

抄録

【はじめに、目的】 脳卒中片麻痺患者の短下肢装具(以下、AFO)は近年、下肢麻痺の病態に適応するように様々な素材、デザイン、継手などが開発され、現在では50種類以上を数えている。しかしながら、数ある中から病態に適した下肢装具の選定法は標準化されていないため、臨床現場での思考や方針が反映されているものと思われる。そこで今回、脳卒中発症後に初回に処方されるAFOを全国的に調査し、各都道府県別との相違について検討したので報告する。【方法】 調査対象は脳卒中を発症後、初回の装具処方に関わる機会が多い全国の回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)を有する病院とした。病院の選定には全国回復期リハ病棟連絡協議会へ加入している病院を中心に各都道府県より5病院以上に、郵送にてアンケート調査を行った。回答は理学療法士(以下、PT)に依頼した。5病院以上からの回答が得られた都道府県は病床数などから考慮して5病院に絞った。アンケートの内容は本邦で脳卒中のAFOとして使われると思われる装具25個をイラストで提示し、各装具の□の枠内に各病院の処方実績より判断して、仮に10人にAFOを処方した場合のAFOの種類の個数を記入してもらう方法で行った。また、イラストにない装具は自由に記入できるように3個分の別枠を設けた。尚、集計に当たり0.5単位の回答まで採用した。得られたアンケート結果より、1.全国の脳卒中に対するAFO処方状況、2.全国集計より得られた処方頻度が高い上位5つのAFOについての各都道府県別による処方状況の比較、3.各都道府県で処方されるAFOの種類別の内訳数(カットオフ値 5%未満)の3項目について分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 アンケートには本研究の主旨を説明する文面も添え、理解してもらい同意の上、返答してもらうこととした。【結果】 全国404の病院にアンケートを依頼し、266病院より回答が得られ(回収率65.8%)、うち有効な回答は259病院(有効回答率97.4%)であった。その中から各都道府県より5病院に絞り、最終的には226病院を対象に分析した。1.全国集計の結果、上位よりシューホーンAFO(35.8%)、オルトップAFO LH(17.0%)、両側金属支柱付きAFO(15.4%)、ゲイトソリューション(以下、GS AFO)10.2%、タマラック・ジレット継手付きAFO(この二つはデザインや機能が類似しているため統合した)6.4%と続いていた。これらの上位5つのAFOだけで約85%を占めていた。2.全国の集計より得られた処方頻度が高い上位5つのAFOについて、都道府県別に比較すると最上位のシューホーンAFOでは6%~66%とかなりの幅でばらつきを認め、栃木県と岐阜県では60%を超えていた。第二位のオルトップAFO LHも2%~50%とばらつきを認め、愛媛県で50%、福井県では38%を占めていた。第三位の両側金属支柱付きAFOも0%~45%とばらつきを認め、東京都、愛知県及び大分県ではそれぞれ40%以上を占めていた。第四位のGS AFOでは0%~34%の幅を認め、青森県、京都府、大阪府及び大分県で約30%を占めていた。第五位のタマラック・ジレット継手付きAFOでは0%~33%の幅を認め、北海道と宮城県で30%以上を占めていた。3.各都道府県で処方されるAFOの種類別の内訳数は3~7種類の幅を認め、中央値は5種類であった。なお、今回の調査では全国で27種類のAFOを認めたが、5%未満をカットオフとすると5種類となった。【考察】 今回の調査では各都道府県の代表的な回復期リハ病棟を有する病院を平均で4.8病院を得ているので、その傾向を捉えることができたと考える。全国の調査によりシューホーンAFO、オルトップAFO LH及び両側金属支柱付きAFOといったAFOが上位を占め、都道府県別にみるとそのAFOごとの割合にはある程度のばらつきを認めた。このことにより都道府県レベルで装具療法に対する取り組みには多少の差が生じていることが示唆された。また、最近開発されたGS AFOは販売業者側の広報力や研修会などの影響もあるものと思われた。数多くのAFOが存在する中で、処方されているAFOの種類別の内訳数をみると実際は従来のAFOを中心に5種類程度であることがわかった。昨今、多くのAFOが開発されているが、知名度や使用経験の少なさから臨床ではあまり普及していなかった。【理学療法学研究としての意義】 AFOの選定には直接的に歩行練習に関わるPTの取り組みや医師への情報提供が重要となる。全国で普及しているAFOを知ることは、変化する脳卒中治療の装具療法への対応と標準化に役立つと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Eb0641-Eb0641, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548731264
  • NII論文ID
    130004693517
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.eb0641.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ