心臓外科術後患者の身体活動量に影響を及ぼす因子

  • 松土 理恵
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 萩原 礼紀
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 山口 智大
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 七田 真美
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 比護 幸宏
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 吉武 勇
    日本大学医学部心臓血管外科
  • 畑 博明
    日本大学医学部心臓血管外科
  • 塩野 元美
    日本大学医学部心臓血管外科
  • 宮本 晃
    日本大学大学院総合社会情報研究科

Search this article

Description

【目的】心臓外科術後患者における、術後早期の身体活動量、リハビリテーション(リハ)経過、および6分間歩行距離(6MD)に影響を及ぼす術前因子を探る。因子が特定でき、離床が遅延する恐れのある患者を前もって推定できれば、適切なリハの提供により、術後の身体能力低下を抑制し、早期の離床・退院や、医療費の軽減が可能になると考えた。【方法】2011年8月15日~10月27日の間に、当院で心臓手術を行った患者13例を対象とした。基本属性、術後経過日数、身体活動量、膝伸展筋力、握力、開眼片足立ち、Timed Up & Go Test(TUG)、Functional Reach Test(FRT)、6MDを術前後に測定し、比較検討した。膝伸展筋力測定は、日本メディックス社製パワートラックⅡMMTコマンダーを使用した。身体活動量はGMS社製Active tracer AC-301A(ACT)を用い、術前と術後6日目にACTを右足首に装着して、X軸Y軸Z軸の合成加速度の絶対値を60秒毎に平均し、本体内メモリに記憶した。被検者には、ACTの付け外しの時間と就寝時間を記載させ、身体活動量は1時間当たりの換算値を用いた。術後の運動機能の指標として、術後身体活動量、リハ経過と術後6MDのそれぞれを従属変数とし、相関関係を認めた項目を独立変数に採用して、従属変数に影響する度合いを解析した。解析方法は重回帰分析を用い、独立変数の選択方法として、変数増減法を選択した。解析にはSPSS Version9を使用し、結果はすべて平均値±標準偏差にて記載。統計学的有意差判定基準は5%未満とした。【倫理的配慮】研究実施にあたり、当院臨床研究審査会の承認を得た。患者には、研究の趣旨、内容及び調査結果の取り扱いなどに関して、事前に説明し同意を得た。【結果】患者背景は年齢:68±13歳、BMI:22.2±12.5、手術内訳は、冠動脈バイパス術5例、弁置換・弁形成術5例、複合手術1例、その他2例であった。手術からリハ開始までの平均日数は2.2±2.1日、端座位:1.8±1.3日、30m歩行:3.5±1.9日、100m歩行:4.5±1.8日、200m歩行:5.7±3.5日、500m歩行:9.4±8.6日、階段昇降:11.0±8.0日、転院:15.2±3.5日であった。身体活動量は術前1914.1±696.9mG、術後1426.1±550.6mG、6MDは術前343.1±109.3m、術後301.4±91.7m、膝伸展筋力は術前2.9±0.9N/kg、術後2.3±0.8N/kg、握力は術前23.7±7.8kg、術後20.5±6.7kg、開眼片足立ちは術前21.6±11.1秒、術後17.8±10.7秒、TUGは術前9.7±5.2秒、術後10.5±6.4秒、FRTは術前30.2±5.0cm、術後28.2±5.9cmであった。 術後身体活動量には、術前身体活動量(p=0.007)と、術前下肢筋力(p=0.032)が影響を与えていた。術後リハ経過に関しては、術前6MD(p=0.05)が影響を与えていた。また、術後6MDは、術前6MD(p=0.009)が影響を与えていた。【考察】これまでに、術後早期における身体活動量に関した報告は少ない。本研究では、術前の身体活動量及び下肢筋力が、術後身体活動量に影響していた。術後リハ経過に関しては、500m歩行達成日に影響を及ぼす因子として術前6MDが抽出され、術前の6MDが術後のリハ経過に影響していた。また当然ながら、術後6MDに影響を及ぼす因子としては、術前6MDが抽出された。これらの結果から、術前の身体機能が術後早期の身体活動量や、リハ達成度、および運動耐容能に影響することが判明した。術前の身体活動量、下肢筋力と6MDが、術後の活動量や運動耐容能、そしてリハ経過に影響することを踏まえると、術前から理学療法の積極的な介入を行い、離床の問題となる因子に取り組めば、術後のリハ向上に貢献すると考える。【理学療法学研究としての意義】心臓外科術前の身体活動量評価により、術後の離床や運動耐容能を推測し、適切な理学療法の介入が可能となる。

Journal

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top