当院の臨床実習における指導の工夫と効果・問題点に関する調査

DOI
  • 村瀬 政信
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 福田 朋子
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 樋口 恵
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 堂下 晶子
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 安本 旭宏
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科
  • 飯田 泰久
    医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • 患者に触れた機会との関連

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抄録

【目的】<BR> 近年の臨床実習における問題点の一つとして,養成校の急増や患者の権利尊重により,実習生の患者に触れる機会が減少していることが挙げられる.理学療法士(以下,PT)は技術を必要とする職業である.したがって,臨床実習で実習生の患者に触れる機会を多くすること(以下,体験重視型実習)が重要と考える.そのため,当院の臨床実習では様々な指導の工夫によって体験重視型実習を行っている.<BR> 本研究は,患者に触れた機会と指導の工夫・効果・問題点との関連について検討することを目的とした.<BR>【方法】<BR> 当院で平成17~21年度に5週間以上の臨床実習を経験した39名中,当院に就職した3名,PT免許のない2名,所在不明な1名を除いた33名を対象に,郵送法による無記名のアンケート調査を実施した.回収数は30名,回収率は90.9%であった.<BR> アンケート項目は[患者に触れた機会][指導の工夫][効果][問題点]とした.[患者に触れた機会]では『当院で患者に触れた機会はどの程度か』の1設問に対して「一番多かった」「多い方であった」「平均的であった」「少ない方であった」「一番少なかった」から回答させた.[指導の工夫]では『症例レポートをレジュメ形式で記載する(以下,レジュメレポート)』『日々の患者の記録をSOAP形式で記載する(以下,SOAP記録)』『担当患者以外でも治療に関わる』などの6設問に対して「大いに良かったと思う」「少しは良かったと思う」「あまり良かったと思わない」「全く良かったと思わない」から回答させた.[効果]では『評価技術が身につく』『治療技術が身につく』『患者とのコミュニケーションが上達する』『積極的に臨床実習が行える』『勉強をする姿勢が持てる』などの11設問に対して「大いに効果と思う」「少しは効果と思う」「あまり効果と思わない」「全く効果と思わない」から回答させ,『実習したことがPTになってから役立ったか』の1設問に対しては「大いに役立った」「少しは役立った」「あまり役立たなかった」「全く役立たなかった」から回答させた.[問題点]では『実習生への負担が大きい』『担当患者を深く考えることができない』などの4設問に対して「大いに問題点と思う」「少しは問題点と思う」「あまり問題点と思わない」「全く問題点と思わない」から回答させた.<BR> 分析方法として,[患者に触れた機会]と[指導の工夫][効果][問題点]の各設問との関連を検討するため,有意水準5%未満でχ2検定を行った.<BR>【説明と同意】<BR> アンケートで本研究のみに回答を利用することを説明し,回収した30名全員から同意が得られた.<BR>【結果】<BR> [患者に触れた機会]の1設問に対する回答は,「一番多かった」53%,「多い方であった」27%,「平均的であった」20%であった.[指導の工夫]の6設問では,97~100%の人が「大いに良かったと思う」「少しは良かったと思う」と回答した.[効果]の11設問では,86~100%の人が「大いに効果と思う」「少しは効果と思う」と回答し,『実習したことがPTになってから役立ったか』の1設問では,90%の人が「大いに役立った」「少しは役立った」と回答した.[問題点]の4設問では,13~20%の人が「大いに問題点と思う」「少しは問題点と思う」と回答した.<BR> [患者に触れた機会]と[指導の工夫]の『レジュメレポート』『SOAP記録』に有意な関連があった.すなわち,[患者に触れた機会]が「一番多かった」と回答した人は,『レジュメレポート』『SOAP記録』の回答で「大いに良かったと思う」が多かった.[患者に触れた機会]とその他の設問に有意な関連はなかった. <BR>【考察】<BR> 当院の臨床実習では,体験重視型実習のために様々な指導の工夫を行っている.例えば,症例レポートはA3用紙1枚程度にレジュメ形式で記載させている.また,患者の状態をSOAP形式で毎日記録させ,そのフィードバックを行っている.<BR> 本調査から,[患者に触れた機会]で8割の人が多いと回答しており,われわれが目標としている体験重視型実習が達成できていたと考える.さらに,[患者に触れた機会]と[指導の工夫]の『レジュメレポート』『SOAP記録』に有意な関連があった.この理由は,多くの患者を担当してもレジュメ形式によって症例レポート作成の負担が少ないこと,症例レポートがレジュメ形式になってもSOAP形式の記録によって患者の状態を深く考えられたためと推察された. <BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本研究から,体験重視型実習では,レジュメレポートやSOAP記録を取り入れた指導をすると良いことが示唆された.このことは,近年の臨床実習における問題点を解決する点で意義があると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), GeOS3074-GeOS3074, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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