階段昇段における単脚支持相の時間変化が運動効率に与える影響
Description
【はじめに、目的】 理学療法を行う際、対象者に一足一段と二足一段の階段昇降練習や指導を行う。これまで、我々は一足一段と二足一段という異なる昇段パターンで速度と運動効率の関係を検討した。その結果、遅い速度では一足一段の運動効率は二足一段よりも低い値を示した。これは遅い速度での階段昇段において、一足一段のステップ頻度が二足一段よりも少なくゆっくりと昇段し、片脚立位姿勢保持といった鉛直方向への重心移動に関与しない筋活動に酸素を多く消費したためと考えられる。また、遅い速度において一足一段の長い片脚立位姿勢保持が運動効率を低下させているならば、単脚支持相の時間を短く、つまりは、片脚立位姿勢保持時間を短くすることで効率を改善させられる可能性が考えられる。臨床においては、低体力者に遅い速度にて一足一段の階段昇段を指導する場合もあり、効率の良い一足一段を指導することができれば、身体への負荷も軽減できると考える。以上の経緯より、本研究の目的は階段昇段における一足一段の単脚支持相の時間変化が運動効率に与える影響を明らかにすることである。【方法】 対象は健常成人男性11名で年齢23.3±2.7歳、身長169.9±3.6cm、体重65.6±6.0kgであった。階段は、公共の階段(段差17.5cm、奥行き30.0cm、23段/階、傾斜角30°)を使用した。階段昇段における単脚支持相の時間条件は、一足一段で鉛直方向への速度(ステップ頻度)を3.5m/min(20steps/min)として、ステップ頻度に自然に合わせた昇段(以下、普通)とステップ頻度に合わせながら単脚支持相の時間を短くした昇段(以下、短縮)の2条件とした。階段昇段は、一人の被験者が2条件を実施するように無作為に抽出し、それぞれの条件で3分間の連続階段昇段を行った。安静時間は各条件で5分とした。測定項目は、酸素摂取量(VO2)と心拍数とした。また、測定機器は携帯型呼気ガス分析装置(アニマ社製AT‐1100)、ポラール心拍計(キャノントレーディング社製S610i)、デジタルメトロノーム(セイコー社製SQ100‐88)を用いた。階段昇段時のVO2は、3分目の定常状態を確認し、それを代表値として体重で除して標準化した。階段昇段時の運動効率は、Gaesserらの報告した機械的仕事を階段昇段時の消費エネルギーで除して百分率として算出した。統計解析は昇段時のVO2と運動効率に対して、単脚支持相の時間条件の比較のために対応のあるt検定を用いた。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には事前に研究の趣旨や安全性を十分に説明し、書面にて実験参加の同意を得た。【結果】 階段昇段の普通と短縮のVO2を比較した結果、短縮は普通よりも有意に低い値を示した(p<0.05)。一方、普通と短縮の運動効率の比較では、短縮は普通よりも有意に高い値を示した(p<0.01)。【考察】 本研究の結果、単脚支持相の時間を短縮したほうが普通よりも運動効率は高い値を示した。普通の昇段は、ステップ頻度に自然に合わせたリズムで昇段するため、短縮よりも片脚立位姿勢保持を要求される。そのため、普通の昇段は短縮よりも片脚立位姿勢保持といった重心移動に関与しない筋活動に酸素を多く消費したため、運動効率は短縮よりも低くなったと考えられる。一方、短縮の昇段はステップ頻度に合わせながら単脚支持相の時間を短く昇段するため、普通の昇段よりも両脚支持の時間が長くなり運動効率が高くなったと考える。したがって、階段昇段における運動効率には、片脚立位姿勢保持への酸素消費が関係し、単脚支持相の時間を短縮することにより,効率を改善できることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】 階段昇段において単脚支持相の時間を短縮する指導は、低体力者への介入として有用であると考える。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2011 (0), Aa0142-Aa0142, 2012
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680548768384
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- NII Article ID
- 130004692271
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed