理学療法士養成課程における初の健康運動実践指導者養成課程導入の取り組み

説明

【目的】<BR> 理学療法士養成校の増加に伴い、各校は特色ある教育プログラムを充実させる必要性に迫られている。また、理学療法士の資質向上と、社会的役割の向上および多様化が叫ばれている。このような状況下で本学では2010年度の開学から、理学療法学科併修過程として健康運動実践指導者の養成課程を導入した。今回は、健康運動実践指導者のカリキュラム導入の有用性やその現状を調査したので報告する。<BR><BR>以下に、健康運動実践指導者養成課程の概要を付記する。<BR> 健康運動実践指導者養成校では、卒業要件に必要な単位の読み替えと、卒業要件に必要な単位以外に定められた選択科目とを履修することにより認定試験の受験資格が得られる。履修科目は1-2年次に設定し、3年次で受験となる。主要科目は、健康科学概論・運動生理学・機能解剖学とバイオメカニクス・栄養学・体力の測定と評価・健康づくりと運動プログラム・運動の実際・予防と救急処置等がある。養成校の認定は、健康・体力づくり事業財団が行い、認定期間は2年間の更新制となっている。認定基準は施設基準の他に、人的要件として医師と体育系教員(専門教員の配置)および財団の実施する養成講座主任教員研修会を受講した教員の配置などが義務付けられている。<BR><BR>【方法】<BR> 本学理学療法学科第1期生44名を対象とした。回答は無記名とし、健康運動実践指導者の履修者群と非履修者群とに分類しアンケート調査を実施した。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 本調査の目的およびデータ処理に関するプライバシーの保護について、調査対象者には口頭および文書による十分な説明をし、調査対象者から文書による同意を得て実施した。<BR><BR>【結果】<BR> 1期生44名中アンケート回収率は41名(93%)であった。健康運動実践指導者の履修者群は21名、非履修者群は20名であった。<BR> 履修者群において、健康運動実践指導者の履修過程が本校にある事が志望動機となった者は10名(48%)であり、健康運動実践指導者の資格に有用性を感じている者が17名(81%)であった。将来、理学療法士として働くうえで健康運動実践指導者のスキルや知識が有効であると考える者は20名(95%)であった。また、資格を活かして働きたい者は18名(86%)であった。カリキュラム選択に満足している者は20名(95%)であり、履修によって理学療法学の学習に役立つと考える者は6名(29%)であった。健康運動指導士の資格取得を考える者は9名(43%)であり、資格取得の際に健康運動指導士として働きたい者は1名(5%)であった。<BR> 非履修者群において、入学前に健康運動実践指導者を知らなかった者は10名(50%)、健康運動指導士を知らなかった者は13名(65%)であった。履修しなかった理由には学業負担が10名(50%)と多く、次に学費負担の5名(25%)が多かった。養成講座に興味を持つ者は15名(75%)、資格の有用性およびスキルや知識が有効と考える者も16名(80%)であった。可能なら今後カリキュラムを選択したいと考える者は6名(30%)おり、一般講習を受けて今後資格取得を考えたい者は1名(5%)であった。<BR><BR>【考察】<BR> 健康運動実践指導者の履修者群は、約半数が本学への志望動機となっており、高校生における資格取得への意識が進路志望に反映していると考える。また、資格の効力感やカリキュラム選択の満足度も高く、理学療法過程に健康運動実践指導者養成課程を併修する事で、早期から学生自身がどのような理学療法士になりたいのかイメージしながら、学業に取り組むことにつながっていると考えられる。<BR> 一方、非履修者群においては、半数が事前に健康運動実践指導者および健康運動指導士を知らなかった。その大半は、養成講座に興味や有用性を感じており、機会があれば履修したい者もいることから、履修選択時に十分な説明が必要と考える。<BR> 「自ら運動指導の見本を示せる実技能力と、特に集団に対する運動指導技術に長けた者」として、積極的な健康づくりを目的とした運動を安全かつ効果的に実践指導できる能力を有することは、大学4年課程の前半にある学生にとって講義へ臨むモチベーションを高め有意義であると考える。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 理学療法士の養成課程で、健康運動実践指導者のスキルを学ぶ選択肢を与えることは、健康増進・予防分野に対する認識を高めるためにも高い意義があると考える。このような取り組みは、選ばれる理学療法士の養成や、質および臨床実践能力の向上に寄与できるのではないかと期待される。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), GbPI1455-GbPI1455, 2011

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548806528
  • NII論文ID
    130005017820
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.gbpi1455.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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