肩峰の外側への拡がりが肩峰下インピンジメントに与える影響について
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- Other Title
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- 肩峰の骨成長時期にあたる高校球児を対象に
Description
【目的】今回投球障害肩を有する高校球児を対象に、診療放射線技師が撮影したX線画像から肩峰指数(Acromion Index:以下AI)を計測し、肩峰下インピンジメントの有無によって群分けし比較した。<BR><BR>【方法】対象は2004年4月から2010年3月までに投球障害肩で当院を受診し理学療法を実施した高校球児52名で、全員の疼痛側(投球側)のAIを測定した。また、Neer、Ellman、Hawkinsのいずれかの検査で陽性を示した者を陽性群とし、いずれも陰性だった者を陰性群とした。AIは肩関節内外旋中間位X線正面像で、肩峰の外側端から肩甲骨関節窩面までの距離(GA)と、上腕骨頭外側面と肩甲骨関節窩面までの距離(GH)で測定し、GAをGHで除して求めた。陽性群と陰性群の2群間で比較し、統計学的処理にはt検定を用い、有意水準を5%とした。<BR><BR>【説明と同意】今回の調査はX線画像により後方視的にデータ収集を行い、診療データに関しては、病院長による許可を得て疫学研究に関する倫理指針に則って取り扱った。<BR><BR>【結果】52名中陽性群であった選手は30名、陰性群であった選手は22名であった。AIは陽性群が0.64±0.08、陰性群が0.68±0.07であり、陽性群で有意に低値を示した。<BR><BR>【考察】今回の結果から、肩峰下インピンジメントを有する選手のほうがAIの値は低く、肩峰の外側への拡がり自体がその要因とはいえなかった。AIに関する先行研究では、AIが高い、つまり肩峰の外側への拡がりが大きいほど上腕骨頭の上行成分の力が高まり、肩峰下インピンジメントが起こりやすく、逆にAIが低いと、関節窩面への圧迫成分の力が高まると述べているが、対象者が平均年齢65歳の腱板損傷患者であることから、内因として腱板自体の変性や脆弱化、外因として肩峰骨棘形成や鳥口肩峰靭帯の肥厚といった加齢による影響もあったのではないかと考えられる。高濱は、解剖遺体の動的解剖において、インピンジメントの衝突部位を関節唇と棘上筋腱板内面の間としており、肩甲上腕関節の最大挙上位いわゆるインピンジメント肢位では正常でも衝突が起こると述べている。 今回の高校球児の陽性群はAIが低かったことから、関節窩面への圧迫成分の力が高まることで、関節唇と棘上筋腱板内面とのインピンジメントつまりは関節内インピンジメントが起きていた可能性がある。だが今回のインピンジメントが肩峰下もしくは関節内であるかの詳細な評価が得られていないため、今後は詳細な病態の把握が必要である。今回の研究では、X線正面像における骨形態の問題に着目したが、インピンジメントの要因としては様々な機能的問題が挙げられる。【まとめ】高校球児52名を対象に、インピンジメントの有無にて群分けし、AIについて調査した。インピンジメント陽性群にてAIが有意に低かった。高校生の年代では、肩峰の外側への拡がり自体が上腕骨頭上方化による肩峰下インピンジメントの要因にはならず、今後は多角的側面から評価し、AIとの相互関係について明らかにしていく必要がある。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】肩峰の骨化・骨結合が起こる高校生の年代において、投球障害の一つである肩峰下インピンジメントと肩峰の骨形態変化との相互関係に関する報告はまだみられないため、今回の調査で肩峰指数として測定することの機能的意義を明確にし、定量的評価への有用性を見出す。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2010 (0), CbPI2203-CbPI2203, 2011
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680548861568
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- NII Article ID
- 130005017180
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed