足関節背屈可動域がスクワット動作に及ぼす影響

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • 矢状面に着目して

抄録

【目的】足関節背屈可動域に着目し,矢状面におけるスクワット動作時の筋活動及び前後方向の足圧中心距離,膝関節及び股関節可動域の各因子の因果関係を共分散構造分析におけるパス解析を用いて明らかにすること.<BR>【方法】対象は,健常成人男性27名(平均年齢23.5±2.5歳,身長171.3±5.2cm,体重66.3±9.8kg)とした.実験に先立ち,各対象者にスクリーニングテストを施行し,下肢に疼痛がないこと,外科的治療を行っていないこと,下肢関節可動域及びアライメントに異常値がないことを確認した.課題動作はスクワット動作とし,その際のEMG,前後方向の足圧中心距離,下肢関節可動域を測定した.これらは,同期信号カウンターを用いることで同期し,各測定データを抽出した.課題動作施行に当たり、被検者の左側に身体マーカー(体幹中央,大転子,大腿骨外側上顆,腓骨頭,外果,第5中足骨)及び筋電図(Electromyography;EMG)の電極を各被検筋(前脛骨筋;TA,腓腹筋外側頭;RF,大腿直筋;GL,大腿二頭筋;BF,大殿筋;GMa,脊柱起立筋;ES)に貼付した.その後,標準化の指標として最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction;MVC)時の筋活動の測定を実施した.スクワット動作はフォースプラットフォーム上に両肩峰幅で立ち,矢状面上で大腿が床面と平行の位置(最終域)と規定した.さらに,スクワット時に前額面上及び上肢による代償を最小限にするため動作を規定し,十分に被験者に説明した上で動作に慣れるために3~4回の練習後に実施した.スクワット動作はメトロノームのリズムに合わせ6秒間で実施し,最終域で2秒キープした。この最終域における2秒間のうちの1秒間を分析対象とした.抽出されたEMGデータより%MVCの算出,フォースプラットフォームデータより前後方向の足圧中心距離の算出,ビデオカメラ撮影データより矢状面からの足関節(SQ-Ankle),膝関節(SQ-Knee),股関節(SQ-Hip)可動域をImage Jソフトを用い算出した.データ処理はSPSSを使用した.多因子の因果関係を複合的に検討するために,共分散構造分析におけるパス解析を用い。各変数間の因果関係をモデル化(パスモデル)した.パスモデルの作成に先立ち,相関分析により関係性を検討した。相関にはピアソンの積率相関係数を利用し,有意水準5%とした。相関係数により中等度以上の関係性が強いと考えられるSQ-Ankle,SQ-Knee,SQ-Hip及び筋活動(TA、GL,RF,BF),前後方向の足圧中心距離の8つの因子を抽出し,抽出された因子を元にパスモデルを作成した。その後,これらのモデルに妥当性があるのかを適合度指標(Goodness of Fit Index;GFI,Adjusted Goodness of Fit Index;AGFI,Root Mean Square Error of Approximation;RMSEA)により検討した.<BR>【説明と同意】T大学研究倫理委員会の承認を得て,文書による実験への同意を得た.<BR>【結果】モデルの適合性はGFI:0.949,AGFI:0.901,RMSEA:0.000で,モデルの妥当性を示した.モデル内の関係性を検討した結果,スクワット時のSQ-Ankleの減少は,前後方向の足圧中心距離と強い関係性を認め,足圧中心は後方に移動した.SQ-Ankle の減少に伴いRF,GL,BFの活動が増加し,前後方向の足圧中心は後方に移動した.<BR>【考察】Cook Gは,コントロールされた運動を確実に行うためには,足関節の可動性がきわめて重要であると述べている.本実験においてもSQ-Ankleが姿勢制御の役割を担い,足圧中心と強い関係性を示したと考える.さらに,北村らは,RFとBF,GLは膝関節において逆に作用する.バランスをとるために相互に協調しあう必要があると述べている.本実験においてもRFの活動に対し,GL,BFが共同的に活動することで,足圧中心を後方に移動したと考える.本実験における結果は,スクワット時の足関節背屈可動域の重要性を示した.<BR>【理学療法学研究としての意義】本実験は,共分散構造分析を用いることで,多因子の因果関係を複合的に検討することを目的とし,スクワット動作時の足関節背屈可動域に着目し実験を行った.スクワット動作は,閉鎖運動連鎖(closed kinetic chain;CKC)の代表的なトレーニングで,リハビリテーションでも多く利用される方法の1つである.しかし,CKCは多関節同時運動が原則であり,いずれかの関節が可動域減少を認めた際など他の関節で代償し,結果として運動効率の低下,障害発生のリスクを増大させる可能性がある。よって,足関節葉可動域の影響により生じた代償運動や筋運動パターンを共分散構造分析にを用い複合的に検討することで,二次的な障害の予防,リハビリテーションにおけるCKCトレーニングの一助となる可能性があると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2010 (0), CbPI1329-CbPI1329, 2011

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548873216
  • NII論文ID
    130005017165
  • DOI
    10.14900/cjpt.2010.0.cbpi1329.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ