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内側型野球肘における投球再開時の身体特性
Description
【目的】<BR> 野球肘内側障害(以下、内側型野球肘)を有する野球選手において、一定期間の投球禁止と理学療法にて局所所見が改善したものの、投球再開時に投球時の肘痛が残存する症例を臨床上経験する。内側型野球肘の関連因子として、局所機能以外に肩甲帯や体幹、股関節などの機能低下が報告されているが、投球再開時に肘痛が残存する症例の身体特性に関する報告は少ない。本研究の目的は、投球再開時に肘痛が残存する内側型野球肘症例の身体特性を明らかにすることである。<BR><BR>【方法】<BR>対象は当院を受診し、内側型野球肘の診断を受けた小・中学生野球選手24例である。局所所見が改善したが、投球再開時に投球時の肘痛を有する14例(平均年齢11.5±1.7歳、野球歴5.4±2.9年)を有痛群とし、同時期に投球時の肘痛がない10例(平均年齢12.1±1.3歳、野球歴4.9±1.9年)を無痛群とした。両群間において発症後の理学療法介入期間に差はみられなかった。また、全例肘関節の著明な可動域制限は認めなかった。測定は、肩甲帯評価として、他動的肩関節外転運動時における肩甲骨始動時の肩関節外転角度(以下、始動角)、肩甲骨固定下での他動的肩関節外転角度(以下、T-ABD)、肩甲骨固定下での他動的肩関節水平内転角度(以下、H-ADD)、関節可動域検査として肩関節90°外転位での内旋・外旋(以下、IR2・ER2)、肩関節90°屈曲位での内旋(以下、IR3)、下肢伸展位挙上(以下、SLR)、股関節90°屈曲位での股関節内旋(以下、HIR)、肩甲骨可動性評価として、肩甲骨最大内転位から最大外転位間の移動距離(以下、肩甲骨移動距離)の9項目で、投球側・非投球側に対して実施した。角度測定はゴニオメーターを用いて5°単位で、肩甲骨移動距離はメジャーを用いて5mm単位で行った。測定は理学療法実施前に行い、手技に成熟した2名で実施した。統計学的処理は項目毎に非投球側に対する投球側の比率を算出し、有痛群と無痛群で対応のないT検定・Mann-WhitneyのU検定を用い有意水準5%で比較した。また有意差が認められた項目を従属変数、その他9項目を独立変数とし、重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した。<BR><BR>【説明と同意】<BR>本研究は当院倫理委員会の承認を得た内容であり、倫理的な配慮や人権擁護がなされることを十分に説明し同意を得て実施した。<BR><BR>【結果】<BR>始動角比率は有痛群97.9±6.0%・無痛群104.8±6.6%で、有痛群は無痛群に比べ有意に低値を示した(p=0.036)。その他項目に有意な差はみられなかった。また、有意差を認めた始動角を従属変数、その他測定項目を独立変数として重回帰分析を行った結果、影響する因子として投球側T-ABD(β=1.08、p<0.01)と非投球側IR2(β=0.46、p<0.05)が抽出された(R²=0.88)。<BR><BR>【考察】<BR>本研究では有痛群は無痛群に比べ始動角が低値を示し、投球再開時に肘痛が残存する内側型野球肘症例の身体特性であることが示された。我々は始動角を肩関節外転運動における肩甲上腕リズムの機能評価と捉えているが、始動角低下の原因は個々により様々で共通の見解がなされていないのが現状である。そこで始動角を従属変数、その他測定項目を独立変数として重回帰分析を行った結果、投球側T-ABDと非投球側IR2が 影響する因子として抽出され、特に投球側T-ABDが非常に高い関連性を示した。T-ABDは肩関節外転運動における肩甲上腕関節の純粋な角度であり、本研究にて示された有痛群の始動角低下は、肩甲上腕関節の可動性低下から起因する可能性が示唆された。肩甲上腕関節の可動性低下はearly cocking phaseでのtake back動作時に肘下がり現象を引き起こし、late cocking phaseからacceleration phaseにおいて肘関節に過度の外反ストレスを招くことが予測される。今後は疼痛が出現するphaseや投球フォームとの関係について調査し、投球再開時に肘痛が残存する内側型野球肘症例の身体特性をより明らかにしていきたい。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>内側型野球肘を有する野球選手において、局所所見が改善したが、投球再開時に投球時の肘痛が残存する症例の身体特性として始動角の低下が明らかとなった。内側型野球肘に対する理学療法は様々な点に着目することを要するが、投球再開時に肘痛が残存している症例に対しては、始動角に着目することが理学療法の一助になると思われる。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2010 (0), CbPI2249-CbPI2249, 2011
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680548885632
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- NII Article ID
- 130005017226
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed